元公安警察官は見た 「ボガチョンコフ事件」で評価された公安捜査員の恐るべき“尾行術”

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 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、ロシアスパイも気づかなかった公安警察の尾行について聞いた。

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 2000年9月、駐日ロシア大使館のボガチョンコフ海軍大佐に内部資料を渡していた海上自衛隊の三佐が自衛隊法違反で逮捕された。実は、この事件で日本の公安警察は高い評価を受けたという。

 旧KGB(国家保安委員会)の科学技術部門のスパイとして1980年代に東京で活動したコンスタンチン・プレオブラジェンスキー氏は、この事件について読売新聞(2000年9月9日付)の取材を受けている。ロシアがスパイ活動を行うのは、技術的に先進諸国より遅れているためで、「日本警察は尾行が上手」と語った。

「ボガチョンコフはロシア連邦軍の参謀本部情報総局(GRU)の諜報員で、スパイの訓練を受け、キャリアを積み上げた情報将校でした。そんな人間が、公安警察の尾行にまったく気づかなかったのです」

 と語るのは、勝丸氏。公安外事1課で公館連絡担当班に所属していた同氏は、大使館や総領事館との連絡・調整が主な任務で、外交官の情報には精通していた。

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