「名古屋金利」を生み出したトヨタのお膝元で地銀再編 愛知ならではの特殊事情とは

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愛知県内のトップバンクに

「ここが愛知だということを忘れてはいけません。統合・合併で規模は大きくなるのでしょうが、それだけで地元の企業はメインバンクに選んだりはしませんから」

 こう語るのは、愛知県内の金融関係者。昨年12月に発表された愛知銀行と中京銀行の経営統合について、釘を刺すような語り口だ。愛知銀行と中京銀行の両行は今年10月にも持ち 株会社を設立して経営統合、2年後の2024年には合併する。

 両行は経営統合に向け、両頭取を共同委員長とする統合準備委員会を昨年12月に設立。審査分科会や市場業務分科会など9つの分科会を立ち上げ、いよいよこの1月から週一回のペースで統合作業を進めていく方針だ。

 統合発表をうけ、マスコミ各社は一斉に愛知県内の金融機関の序列が変わるかのように報じた。たしかに両行が統合すれば総資産6.4兆円、貸出金残高は4兆円超となり、愛知県トップの名古屋銀行(総資産4.9兆円、貸出金残高3.1兆円)を抜き去り、規模の上では県内 のトップバンクになる。

全国平均を大きく下回る金利

 記者会見で愛知銀行の伊藤行記頭取は、「経済規模が大きい愛知県の中で(融資額)10%近いシェアが取れる。地域金融機関の中ではトップシェアになり、愛知県内での存在感を高められる」と強気のコメントを発した。

 だが、規模が大きくなるからといって県内の企業が愛知・中京連合をメインバンクに選びなおすかといえば、そうは言えないというのが県内金融界の支配的な見方だ。地元の金融マンが解説する。

「愛知県はトヨタ自動車のお膝元。県内には自動車部品メーカーなどトヨタグループの一時下請け、二時下請け企業だけで何万社とあり、名古屋、愛知、中京の3行以外にも信用金庫、信用組合の数が20以上もあります。他県と比べて金利競争が激しく、全国平均を大きく下回る金利は『名古屋金利』と呼ばれてきました。かといって地元の企業がメインバンクを低金利の金融機関へポンポンと乗り換えていくかというと、そうではないのが愛知の特徴。『おたくの前支店長はうちが苦しい時に助けてくれたから』とか『あんたとこの親父さんはうちの親父が世話になったから』という風に、金利よりも恩義や仁義が重んじられる土地柄なのです」

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