麻布、開成…中高一貫校でコロナ世代に起こった“奇跡”とは オンライン文化祭などで見せた驚異の適応力

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個性的な生徒に光が

 兵庫県の甲陽学院高等学校の杉山恭史(たかし)教諭は、オンラインで実施された文化祭でW君の大活躍を教えてくれた。

 準備を進めるうえでどうしても避けられない対面での打ち合わせや作業の場における感染防止策をマニュアル化し、各担当者が制作する素材の集約やチェックのスキームを組み立て、学校のサーバーに負担をかけない方法や著作権問題を回避する方策まで考えた。

 前例のないオンラインでの文化祭開催に、生徒たちが果敢に挑戦したエピソードは、多数の学校から寄せられた。各学校の教員たちも「オンラインでの文化祭開催は、よそでもたくさんやっていますよね」と詳細を語るのを控えるほどだ。しかしW君のケースに私が注目したのは、彼がコロナ以前から起立性調節障害を抱えていたと聞いたからだ。

 この障害は中高生に多い。自律神経不全により、起立時に立ちくらみ、失神、頭痛、疲労などが出現。午前中は体がいうことを聞かず、午後になるとようやく普通に活動できるようになることが多い。

 W君もコロナ前から、午前中は学校に通えず、なんとか午後の授業だけ参加するような生活を送っていた。しかし友人は多く、知的好奇心も旺盛で、インターネットを通じて全国の高校生や大学生とつながって各種イベントを企画運営することができる手腕の持ち主だと杉山教諭は言う。そんなW君の持ち味が、コロナ禍中の活動で全面的に生かされたわけである。

 学校のあり方がちょっと変わるだけで、いつもは光が当たらない個性的な生徒に光が当たり、水を得た魚のように力を発揮しだすことがある。そんなことも、コロナ禍から得られた学びの一つではなかろうか。

「時代の転換点にワクワク」

 駒場東邦中学校・高等学校では、コロナ禍での夏休みをふまえ、中3の現代文で「贅沢とは何か」を話題にした。生徒たちのコメントがほんわかしていて微笑ましい。

「水菜ともやしを大量に育て、スーパーで買ったちょっと高いラーメンに入れて家族と一緒に食べた」

「祖父母からお菓子やお小遣いが届いたとき、いつもなら電話ですませてしまうが、今回は鳥獣戯画展で買った便せんを使って手紙を書いた」

「24時間寝ないでいくつかのドラマやアニメを最終回まで見続けた。翌日は約24時間寝続けた。その翌日は大量に食べた」

 ステイ・ホームだからこその時間の使い方に、贅沢を見出しているようだ。

 鴎友(おうゆう)学園女子中学高等学校では、高2の生徒にオンライン授業についての感想を聞いた。その中に次のようなコメントがあった。

「コロナウイルスの影響で沈みがちなことも多いですが、私は時代の転換点に立っている気がして、ワクワクしています。私よりも経験値の高い人も私も、コロナに振り回されています。どんなにすごい人もコロナを倒すための武器のストックはないという点では同じ地表にいます。そうであるならば、明日世界のヒーローになれるのは私だという可能性が十分ある。それは今までの世界の回り方じゃあり得なかったことなのではないかと思っています。無論本当にそんなことはできません。まったく同じ地表にはいません。お気づきかもしれませんが、私はしかし夢想家なのです。自粛中に修行僧のような生活をしていたら気づきました」

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