恒例の「相棒・元旦スペシャル」はSeason1で放送されなかった理由

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“右京”は「響きが良かったから」

 重要なポイントとなる“特命係”という設定も輿水によって生まれた。部署名は格好よく聞こえるものの実際は窓際部署で、かつシリアスな裏設定も欲しいとの考えからだった。そしてその部署に追いやられた杉下も切れ者すぎて嫌われているという人物像となったのであった(※3)。

 杉下右京の“右京”という名前は、かつて日本テレビ系で放送されていた大人気ドラマ「パパと呼ばないで」で主演の石立鉄男演じる“安武右京”から名付けられた。作中での「右京さん」という呼び方の響きがとても良かったことから採用されたのだ(※4)。

 かたや寺脇康文演じる杉下右京の相棒・亀山薫のキャラクターは、寺脇本人の明るく陽気なキャラクターが反映された。下の名前の“薫”はとあるスタッフのアイディアだったが、ちょっと“中性的なところがいい”という理由で採用されたそうだ(※3)。

その後、人気が爆発

 肝心の「相棒」というタイトルについては面白いエピソードが残っている。当初、スタッフ全員が納得するものがなかなか浮かばなかった。「黄金刑事(ゴールデンコップス)」という案が仮タイトル扱いになっていたところ、後日、中華料理屋でスタッフが食事しているときに偶然口にした「相棒」というフレーズが、正式な番組タイトルに決まったのだった。もっとも誰が思いついたのかはいまだにはっきりとしていないらしい(※2)。

 こうして「相棒~警視庁ふたりだけの特命係」が「土曜ワイド劇場」では00年6月3日に放送された。記念すべき第1作のサブタイトルは「刑事が警官を殺した? 赤いドレスの女に誘惑され…死体に残る4-3の謎とは?」といういかにも2時間サスペンスドラマらしいものだった。だが、その内容はただの2時間サスペンスに留まらなかったのである。“人材の墓場”と呼ばれる窓際部署の「特命係」を舞台に、超人的な推理力と洞察力を持ちながらも、その変人ぶりから集団に馴染めず独りで事件に挑む杉下右京。自らの失態により捜査一課から特命係に左遷させられた肉体派の熱血漢・亀山薫……。ひょんなことからコンビを組むことになったこの2人のデコボコぶりのキャラ造形がインパント大だったことに加え、難事件を捜査・解決していく過程やトリック、真犯人の存在といった本格ミステリーに欠かせない要素も秀逸だった。結果、第1作の視聴率はなんと17.7%と高視聴率を記録したのだ。

 これを受け、01年1月には2作目が、01年11月には3作目が放送された。前者が22.0%、後者が17.4%と高視聴率を獲得。翌02年10月からは1クール、全12話の待望の連続ドラマ化が決定したのである。タイトルも「相棒~警視庁ふたりだけの特命係」と「土ワイ」時代を引き継ぐ形で、今やお馴染みとなった水曜21時の刑事ドラマ枠での放送となった。

 つまり、“season1”は10月から12月までの1クールの放送だったため、元日スペシャル自体がなかった。そして“season1”が平均視聴率13.1%の視聴率を獲得したこともあり、続編の放送が決定。翌03年10月から同枠で“season2”の放送がスタートした。タイトルも「相棒」と簡略された。放送期間も2クールの半年間に延びた。これによって「土ワイ」時代の3作品は“pre season”と位置付けられることとなり、以降、「相棒」は毎年秋改編時のキラーコンテンツとしてテレビ朝日に欠かせない重要な作品となっていくのだ。

 ただ、元日スペシャルは“season2”でも放送されることはなく、年明け最初の放送は1月7日だった。続く“season3”で待望のお正月スペシャルが放送。それでも放送日は元日ではなく、通常放送の水曜日に当たっていた1月5日だった。このスペシャルが“season3”全19話の中で最高の15.2%を叩き出したのである。

 こうした実績が評価されたのか、“season4”でついに元日に「相棒」のスペシャルが放送されることになり、以後、定着していくのだ。さて冠城亘、最後の元日スペシャルでは、どんな大事件が待っているのだろうか。

上杉純也

デイリー新潮編集部

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