それでも「日本はダメ」と唱え続ける韓国人 絶望的な劣等感が生む「K防疫信仰」

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「我が国はいい国」と信じたい

――青瓦台の主張が通って、K防疫批判は収まるのでしょうか。

鈴置:それはまだ分かりません。却って反発する人も多いでしょう。ただ、見落としてならないのは、韓国人が「我が国はいい国だ」と信じたがっていることです。

 日本の文芸誌『すばる』2020年8月号に韓国のSF作家で弁護士のチョン・ソヨン氏が「コロナ以後の日常――韓国・ソウル」というタイトルのエッセイを寄せています。

 タイトル通り、コロナで閉鎖的な環境に住むことを余儀なくされた日常を描いているのですが、最後のくだりが印象的でした。引用します。

・コロナ以後の時代に韓国・ソウルで暮らしながら、私は改めて実感する。私たちは命が連結された共同体であると。そして国家や他人が私の命を見捨てないだろうと信じられるようになった自分自身に驚き、安堵している。

 韓国政府のコロナ対策に全幅の信頼を寄せており、その安心感を日本の雑誌に表明したのです。筒井康隆氏ら52人がリレー形式で2020年1年間をつづった『パンデミック日記』と対照的でした。

 52人中47人が日本在住ですが、「国家に守られている」といった感想を書いた人は皆無でした。何人かは政府や自治体の首長の無能さを批判しました。

政府に従順な日本人、独自に動く韓国人

――どうしてそんなに差があるのでしょうか。

鈴置:国家と国民の間の信頼感の差と思います。韓国では死者が1人も出ておらず、大統領が「新型コロナはすぐに収まる」と語っていた時から人出が急減しました。韓国人は国や政府を頭から信じていないのです。

 一方、日本では政府が「三密」を呼びかけて初めて人出が減少した。国というものを信用しきっていて、国の指示に極めて従順です。

 なお、この点は「『防疫で世界を先導』と胸を張る文在寅、『反面教師に』と冷ややかな安倍晋三」でデータをもとに論じています。

 ただ、政府の指示に従順な日本人は、国家が国民の命を守るのは当然と考えている。だから政府が何をやろうが感謝しない。不足な点にだけ目が行って怒る。

 韓国人は日本人以上に国に厳しいけれど、心の奥底では「信じられる国家」に憧れを持っている。国に深い不信感を持つからこそ、国を信じてみたい。そこで、何かいい材料があれば、自分は国に守られていると言い出すのです。

 チョン・ソヨン氏がこの記事を書いたのは2020年6月上旬と思われます。韓国を肯定的に評価する「K防疫」という言葉がメディアで使われ始めた頃です。大邱からソウルに感染が広がっていましたが、全国の1日の新規陽性者はまだ、2ケタに過ぎず、今から考えると実にのどかな日々でした。

昔の韓国人に戻るのか

――今、『すばる』から寄稿を頼まれたら、チョン・ソヨン氏はどう書くのでしょうか。

鈴置:私も読んでみたいものです。今も「国家が私の命を見捨てないと信じる」と書くのか、一転して「文在寅の不実」をなじるのか――。

 これはチョン・ソヨン氏の問題だけではないと思います。韓国人がK防疫をバネに一段と自信を付けるのか。それともK防疫の馬脚に気付き、劣等感に苦しむ昔の韓国人に戻るのか……。韓国は今、岐路に立っているのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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