元公安警察官は見た タレコミは9割以上ガセ、それでもバカにできないマジネタの具体的事例

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大使館の職員が営む「地下銀行」

 タレコミ情報をもとに捜査したところ、ある国の大使館職員が「地下銀行」をやっていたことが判明したこともある。

「地下銀行を営むのは、ベトナム人やフィリピン人が多いですね。正規の海外送金の手数料より安く送金できるし、何よりも税務当局から金の流れを把握されないというメリットがあります」

 地下銀行は、たとえば彼らが行う場合、母国にある自分の銀行口座に資金をプールしておく。送金の依頼があればお金は現金で受け取り、ネットバンキングで母国にある自分の口座から送金先の口座に振り込むというシステムだ。正規の海外送金手数料は最低で5000円以上かかるが、地下銀行だと手数料は1回の送金で1000円程度となっている。

 地下銀行で海外へ送金すれば無免許による為替取引となり、銀行法違反で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課せられる。

「日本に滞在する外国人が地下銀行をやるケースはよくありますが、大使館の職員となると社会的信頼もあるので、多くの依頼がある。中には、マネーロンダリングのために暴力団がこれらを利用するケースもあります。そのため厳しく取り締まる必要があります」

 不正送金に手を貸す外交官もいるという。

「外交官は、外交特権によって外交行嚢(こうのう・通称外交パウチ)と呼ばれる入れ物で航空便や船便で毎日のように母国と日本の間を行き来させています。この荷物は、一度封印してしまえば空港の保安検査や税関検査で開けられることがないので、これを使って現金を送ることが可能です。しかし、これには警察が手を出せないので、立件は極めて難しいと言えますね」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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