オミクロン株「弱毒化」説を検証 終息への“救世主”となる可能性も

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既存のワクチンは効く?

 Q.そもそも既存のワクチンは効くのか?

 病床が整備されてもワクチンが効かなければ、不安は募る。まず懸念材料から。前出の水谷教授が言う。

「ワクチンを打つと、体のなかに中和抗体が作られます。これはウイルスに結合し、ウイルスが細胞に感染するのを邪魔する、つまり中和する抗体です。ところが、オミクロン株のスパイクたんぱく質には、30カ所の変異がある。スパイクたんぱく質は、いくつものアミノ酸が連なって構成され、そのアミノ酸のうち、30カ所以上が変異しているわけです。それはすなわち、中和抗体から逃れる変異なので、ワクチンの効果が多少なりとも低下することが懸念されるのです」

 だが、話はこう続く。

「しかし、中和抗体はスパイクたんぱく質にある複数のアミノ酸を認識して結合しているため、いくつかのアミノ酸が変異しても、ほかの部分でウイルスを認識し、感染を抑えます。ではファイザーとモデルナのワクチンは、オミクロンにどの程度効くか。デルタ株に対し、感染予防効果が70%まで下がったと考えるなら、いまのところ、70%以下と見ておいたほうがいいかもしれません」

 ただし、「警戒の意味も含めて」と加えるのだ。

 また、埼玉医科大学の松井政則准教授は、ワクチンに関して「もうひとつ重要なこと」を、こう話す。

「ワクチンで作られる免疫では、T細胞も誘導される点です。免疫はT細胞とB細胞が誘導されることで作られます。抗体を作るB細胞が注目されますが、ここでは抗体にくらべて変異に強いT細胞も重要です。こんなデータがあります。新型コロナに感染して無症状や軽症だった人と、重症化した人とで血液をくらべると、抗体は両者とも十分誘導されていた。一方、T細胞は、前者では多く活性化していたのが、後者ではその数が極めて少なかった。つまり、重症化予防にはT細胞が重要ですが、ファイザーやモデルナのワクチンは、T細胞を誘導するので、オミクロンに対しても、重症化予防はしっかり保たれるのではないでしょうか」

危険なのは3回目の接種をしないこと

 Q.3回目のワクチン接種も、やはり必須か?

 松井准教授が続ける。

「二つの理由から必要だと考えます。一つは、まだデルタ株が主流で、その感染を防ぐ必要がある。もう一つは、仮にオミクロン株に対してワクチンの有効性が下がったとすれば、なおさらブースター接種で、抗体量をぐんと上げておく必要があります。一番危険なのは、“このワクチンはオミクロン株には効かない”と決めつけ、3回目の接種をしないことです」

 寺嶋教授が補う。

「デルタ株に対するものですが、イスラエルの実社会での研究結果では、3回目を打った人は、2回だけの人にくらべ、感染予防効果が11倍、重症化予防効果が20倍弱になったと示されています。オミクロンに対しても、同じだけ効果を発揮するかわかりませんが、抗体価を十分に上げておいてこそ、感染予防につながると思います」

 Q.間もなく特例承認される飲み薬は、オミクロン株にも効きそうか?

 松井准教授によれば、

「メルク社のモルヌピラビル、ファイザーのパクスロビド、塩野義製薬のものなどは、ウイルスが細胞に侵入してから、増殖するのを防ぐ薬。オミクロン株で見られるスパイクたんぱく質の変異は、細胞に侵入する段階に関係する変異なので、内服薬の効果に大きな影響が出るとは考えにくい」

 とのこと。すると、先ほど寺嶋教授は、内服薬の重症化予防効果に触れていたが、それがそのまま期待できるということだろうか。

「ただし、モルヌピラビルは、重症化予防効果は30%程度。日本でも年内に承認されるでしょうが、ワクチンにくらべると効果は弱いので、頼りすぎは危険です。ファイザーのパクスロビドは重症化を89%防いだ、とのデータがありますが、日本で使えるのは少し先になりそう。しばらくは、一番頼りになるのはワクチンだと思います」(寺嶋教授)

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