オミクロン株「弱毒化」説を検証 終息への“救世主”となる可能性も

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ワクチンの有効率次第

 ところで、オミクロン株が登場しなくても、近く第6波は発生すると見られていた。ただし、日本のワクチン2回接種率は、すでに77%に達しており、波の高さは第5波よりかなり低い、というのが大方の見方であった。たとえばAIを使い、第5波が8月下旬にしぼむと予測していた名古屋工業大学の平田晃正教授(医用工学)のチームは、第6波のピークは東京では来年1月14日で、新規感染者数は370人程度、大阪では140人程度としていた。

 この予測も、オミクロン株の登場で上方修正を余儀なくされるのだろうか。平田教授に尋ねると、

「前回予測したデータは、オミクロン株など変異株の出現を、考慮したものではありません。ワクチンがどの程度有効であるかという点が、シミュレーションの結果を最も左右するのですが、その値をファイザー社が発表していないため、まだなんとも言えません」

 と言い、こう続ける。

「現在、オミクロン株は、デルタ株の2倍ほどのスピードで感染者が増えているようですが、ただし、それはワクチンの2回接種率が25%程度にすぎない、南アでの数字。国民の77%が2回接種を終えている日本でどのような結果になるかについては、ファイザーのワクチンの有効率次第で変わってきます。また、すでに新型コロナに感染した人の再感染リスクは3倍、という発表もありますが、まだ統計の詳細に読めない部分があり、こうした見解がどれだけ有効であるか、判断しにくいのです」

日本と異なる南アの条件

 要は、まだデータが揃わず、感染力や毒性を含めたオミクロン株の性質を、判断できないという。

 ところが、オミクロン株への注意を、真っ先に世界に喚起したWHOは、「危険性の判断は早すぎる」と警鐘を鳴らし、「ワクチンの改良が必要かどうかの判断は時期尚早」と言う。日本が外国人の新規入国を禁じたことに対しても、「疫学的に理解しがたい」と批判している。こうした発言をどう読みとればいいのか。

 むろん、まだわからないことが多い。だが、現状で能(あた)うかぎりの鮮明なオミクロン像を、最新のデータや見解を交えて、以下に示していきたいと思う。

 Q.オミクロン株の感染力はどの程度強いか?

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授が言う。

「現在、南アの一定の州や地域では、感染者の90%近くをオミクロン株が占めています。10月まではほぼ100%がデルタ株だったことを考えると、やはり広がりやすいのでしょう。他国で発見されるまでのスピードも速く、11月に南アで増えはじめて約1カ月しか経たないのに、40カ国以上で発見されているのは、感染力が増しているからだと考えられると思います」

 感染力が高いのは、スパイクたんぱく質に、30もの変異が起きたからだといわれる。東京農工大学農学部附属感染症未来疫学研究センターの水谷哲也教授が、その仕組みを説明する。

「ウイルスがヒトの細胞に感染する際、足掛かりになるのがスパイクたんぱく質で、そこに起きている変異が、従来株とはくらべものにならないくらい多い。そのうえ、スパイクたんぱく質のなかの“受容体結合領域”で起きている変異があります。これは、ウイルスが体内に侵入する際、ヒトの細胞と直接接する領域で、ここに変異が起きると、感染のしやすさに変化が起きやすいのです」

 そして、オミクロン株の、この領域の変異には、

「ヒト細胞とウイルスとの結合を促進することがわかっているもの、中和抗体から逃れる可能性があるもの、すでに感染性を高めることがわかっているもの、などがあります。今後、オミクロン株が感染の主流になっていくなら、感染しやすくなる変異が起きた、といえると思います。その意味でも、米国やドイツなど、感染力の強いデルタ株の流行地域で、オミクロンがデルタに置き換わるかどうか、注視したいところです」

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