なぜ日本人はデータを使ってコロナを正しく把握できないのか 政府もメディアも“お祭り”に加担

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死亡率は激減

〈急拡大と収束を繰り返すウイルスのサイクルはコントロールできない。しかし、マスクや手洗いなど、人間の“努力”によって感染者数をなるべく低く抑え、ワクチン接種によって死亡者数や重症化率を下げることは可能である。日本と世界のデータを比較すると、日本の“優秀さ”が際立つ、と藻谷氏は説く。〉

 第5波の拡大中に五輪が開催されていた8月2日から8日の期間、日本における人口100万人当たりの新規陽性判明者数は106人。では、同じ時期に他の国はどうだったのか。EUは148人。ワクチン接種が日本より進んでいたアメリカは328人、イギリスは400人。やはりワクチン接種先進国だったイスラエルは405人です。日本はまだ60代以上の高齢者にしかワクチンが行き渡っていなかったにもかかわらず、実は非常に優秀な状況だったといえるわけです。

 こうした状況を「さざ波」と言った人がいましたが、もちろん「さざ波」ではない。入院できない患者が続出しましたし、医療関係者も大変な思いをしたわけですから。ただしこれは、1年半経っても対応病床と人員を有効に増やせていないためで、そこは政府の無策が問われるところです。

 感染者数を見ると、第5波は第4波に比べて2.7倍と試算される一方で、死亡者数は6割になっている。つまり感染者の死亡率は、5分の1程度に下がったわけです。死亡率の高い高齢者を優先してワクチンを打ったことの、明確な効果です。「ワクチンが効いていない」などと言う人は、感染者数しか見ていないのでしょうか。

第5波と五輪は無関係

〈第5波は東京オリンピックの時期と重なった。そのことから、あたかも両者を関連付けるような見方も一部にあったが、藻谷氏はこれを明確に否定する。〉

 第5波が、東京オリンピックに関係して発生したということは全くありません。国立感染症研究所の遺伝子解析で、日本で第5波を起こしたデルタ株は、今年5月18日に陽性が確認された首都圏在住・海外渡航歴なしの一人から広まったものだと確認されています。つまり、そのはるか後の7月下旬に始まった東京オリンピックに関連して入国した誰かが、ウイルスを持ち込んだのではありません。これはNHKのニュースにもなり、政府の部会でも報告されているはずの事実ですが、知られていないのはなぜでしょうか。

 また、東京オリンピックが人流を増やして第5波を拡大させた、というのも全くお門違いです。第5波が始まったのは6月下旬です。実際の感染と判明の間には2週間程度のずれがあるので、感染拡大の開始は6月初旬でしょう。これはオリンピックが始まるずっと前です。さらに言えば、オリンピックに伴う人流なんて、毎日の通勤者数に比べればほんのわずかです。

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