一律50円運賃、ベビーカーシェアリング… 頼りない行政よりも先を行く鉄道事業者の子育て支援

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「一律50円」だけでなく…

 小田急が破格とも言える運賃へと切り替える背景には、団塊世代が定年退職したことやコロナ禍によるテレワーク推進による通勤需要の喪失がある。鉄道利用者が減ることは、単に鉄道事業が減少することにとどまらない。鉄道利用者が減少すれば、沿線のにぎわいにも大きく影響する。

 小田急の場合なら、JR線や京王線など複数の路線が乗り入れる新宿駅は別格としても、東京メトロ千代田線との乗換駅となる代々木上原駅、京王井の頭線との乗換駅となる下北沢駅、相模鉄道との乗換駅となる海老名駅、そのほかにも特急停車駅などの主要駅からにぎわいが消失してしまう可能性がある。

 主要駅には百貨店などの系列の商業施設があり、そこへ買い物にくる沿線住民は少なくない。商業施設からにぎわいが消えれば、当然ながら沿線の自社で開発したオフィスビル・住宅といった不動産価値が低下する。

 鉄道の利用者減は、このように多角的かつ複合的に影響を及ぼす。だから、鉄道事業者にとって容易に見過ごすことはできない。

「一乗車一律50円が大きくクローズアップされていますが、子育て応援ポリシーを策定ししたように子育て支援につながる施策はほかにもあります。例えば、2021年4月から新宿駅で開始したベビーカーシェアリングもそのひとつです」と説明するのは、小田急電鉄のCSR広報部の担当者だ。

 新宿駅を皮切りに始まった小田急のベビーカーシェアリングは、大きなベビーカーを持ち運ぶ負担はなくなる。子連れの親にとって、ベビーカーをはじめとする離乳食・おむつ・あやすためのおもちゃetcは、とにかく荷物になりがちだ。

 自動車の運転に不慣れな若いママにとって、ベビーカーを持ち運ぶことから解放されるベビーカーシェアリングは絶大な支持を得た。そうした支持を追い風に、ベビーカーシェアリングは海老名駅や新百合ヶ丘駅にも拡大していく。

 コロナ禍ということもあり、ベビーカーシェアリングの利用に衛生面から抵抗感を示す人は一定数いるだろう。シェアリングで貸し出されるベビーカーは、各社で衛生に配慮した体制を取っているが、それでも気になる利用者は、除菌シートを持参するという自衛策を講じることで衛生面はクリアできる。ベビーカーを持ち運ぶストレスに比べれば、圧倒的にラクになるのだ。

 JR東日本も、小田急と同様に2021年4月から新宿駅をはじめ東京駅・池袋駅・横浜駅などの主要駅でベビーカーシェアリングを開始。同事業を開始してから1年も経たないうちに、ベビーカーシェアリングのポート数や設置駅を拡大させている。需要があることは間違いなく、評判もいいことを物語る。

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