オミクロン株の重症化率、死亡率は高くない? ワクチン、治療薬は効くのか…専門家が解説

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 ポストコロナに向かっていたムードが、一瞬にして恐慌を来(きた)したかのようである。原因は新たな変異株「オミクロン型」。WHOが最高度の警戒レベルに分類し、同時株安をはじめ世界が震え上がったが、実態はまだ謎に包まれている。いま、その「謎」に答えよう。

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 このところ多くの国がウィズ・コロナの方向に舵を切り、規制を緩和していた。その結果、ドイツやオーストリア、イギリス、あるいは韓国など、感染が再拡大した国はあるが、大勢としては、世界はポストコロナを見据えて進み、世界景気は回復基調にあった。

 ところが、11月26日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均の構成銘柄が軒並み下落し、前営業日にくらべ905ドル安と、今年最大の下げ幅を記録。さらには、アジアや欧州市場でも軒並み株価は下落し、世界同時株安となってしまった。

 景気回復が遅れる、という警戒感に包まれたせいだが、原因は言うまでもなく、新型コロナウイルスの新しい変異株にあった。

 11月11日に初めて見つかったこの変異株を、世界が一気に警戒したのは、25日に南アフリカの国立伝染病研究所などが、同国内で感染例が急増していると公表してからである。

 それに対するWHO(世界保健機関)の反応も速かった。浜松医療センターの感染症管理特別顧問、矢野邦夫医師が言う。

「WHOは南アの報告を受けた11月24日、この変異株を“監視下の変異株(VUM)”に指定しましたが、2日後の26日には、次の“注目すべき変異株(VOI)”という段階を飛ばし、いきなり最も警戒度が高い“懸念すべき変異株(VOC)”に指定、“オミクロン型”と名づけました。その速さには驚きました。これまでWHOがVOCに指定したのは、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタの四つ。いずれも見つかったのは昨年で、感染力の高さに警戒すべき変異株の登場は1年ぶりなのですから、世界的に株価が下がる理由がよくわかります」

たちまち世界中に

 オミクロン(ο)は、ギリシャ文字のアルファベットである。これまで最新の変異株はミュー(μ)だったので、次はニュー(ν)とクサイ(ξ)が充てられるはずだったが、これら2文字は飛ばされた。

 その理由についてWHOは、「ニュー」は英語の「new」と混同しやすく、「クサイ」は人名に該当するから使わなかった、と述べている。たしかに、「クサイ」は英語で「xi」と表記され、習近平国家主席の「習」と同じ綴りなので、中国に忖度(そんたく)したのだ、というのがもっぱらの観測である。

 いまのところ、このオミクロン株は、かなりの勢いで各国に広がっている。

 まずは南アの隣国のほか、香港やイスラエル、ベルギーなどで感染者が確認され、その後、たちまち欧州各国やカナダなどにも広がった。各国はアフリカ南部からの入国制限など、対策の強化を急いでいて、日本の岸田文雄総理も11月29日、「当面の間、すべての国から外国人の新規入国を原則停止する」と発表した。

 こうした情報に触れれば、だれでも不安になるものだが、こういうときほど冷静沈着が肝要。落ち着いて行動するには、敵のことを少しでも知ることである。

 その一助になるべく、現時点で可能なかぎり、その姿を明かしていきたい。

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