中日・又吉克樹がFAで争奪戦へ…それでも残留したほうがいい“気になる理由”

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投手が有利な本拠地

 しかしながら、中日に残留することによるメリットも小さくはない。ホームランが出づらく、投手にとって有利なバンテリンドームを本拠地としている点だ。今年の又吉は66試合中、半分以上の37試合がバンテリンドームでの登板となっている。その防御率は1.02、被本塁打0と圧倒的な数字を残している。登板数が少なく単純な比較はできないが、ホームランが出やすい東京ドームでは、5試合に登板して防御率5.79、被本塁打1で、やはり広い本拠地の恩恵を少なからず受けているといえるようだ。

 さらに気になるのが、又吉自身の成績とピッチングスタイルの変化である。デビューから3年間は、イニング数を上回る奪三振をマークしていたが、ここ数年の奪三振数は確実に減少傾向にあるのだ。例えば、ルーキーイヤーの14年は、イニング数81回1/3で奪三振は104個だったのに対して、今年はイニング数63回1/3で奪三振は41個となっている。

「打たせてとるアウト」の割合が増えると、ホームランが出やすい球場を本拠地に登板することで、被弾する確率が増えて、それだけ不利になる。また、高い守備力を誇る中日の野手陣をバックに投げるからこそ、今のスタイルが生きている。

引退後のセカンドライフを考えると

 もう一つの中日の球団としての特徴は、生え抜き選手の功労者に対して手厚いことだ。引退後もコーチに就任するOBは多く、一度球団を離れても、再び呼び戻される確率は、他球団と比べても高いように感じる。

 又吉は1年目からフル回転し、既に400試合に登板しており、現在の投手陣の中で指折りの“功労者”である。仮に選手としての年俸、契約内容が他球団よりも劣っていたとしても、引退後のセカンドライフまで考えると、中日に残った方が最終的にはプラスになるだろう。

 以上のことから総括すると、現在のピッチングスタイルと先々の将来を考えるのであれば、中日に残留した方が長く活躍できる可能性は高いと思われる。果たして、又吉はどんな決断を下すのか……。ストーブリーグの大きな注目ポイントとなることは間違いない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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