日大のドン「田中理事長」逮捕で私大ガバナンス改革は待ったなし それでも反対する人々の面の皮

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文科省の貴重な天下り先だから

 文科省が主導して改革を進めるとなれば、学校法人関係者からの怒りを買う。文科省にとって学校法人は貴重な天下り先でもあり、「対立」するわけには行かないのだ。

「文科省としては改革会議に勝手に改革案を作ってもらいたい、というのが本音でしょう。今回のガバナンス改革会議には学校法人関係者を入れず、ガバナンスの専門家だけで構成して改革を進めることになったのは、実は文科省にとっては都合が良かったのです。言うことを聞かない委員たちが報告書を作ったと言い訳できますから。しかし、旗色が悪くなった経営者側は、課長クラスを呼びつけ、何でこんな人選をしたのかと吊し上げたようです」(前出の文科省関係者)

 実際、「12月3日の改革会議の会合に出される報告書の原案は、座長である増田宏一・元日本公認会計士協会会長ら委員たちが執筆していて、役所はノータッチ。審議会の報告書は役人が書くのが当たり前なので、極めて異例」(同)と言う。

 ようやく大学のガバナンス改革に向けた提言が出てくることになるわけだが、会議には終始追い風が吹いている、と改革会議の委員のひとりは語る。

「この会議が始まった7月に日本大学の事件が起きました。附属病院建設を巡る背任容疑で井ノ口忠男理事が逮捕されたのです。アメフト部の危険タックル問題で井ノ口容疑者は理事を一度辞任していたのですが、いつの間にか理事に戻っており、これだけでもガバナンスの欠如は明らかです。誰を理事にするかは理事長の胸先三寸で、日本大学の理事会も評議員会も田中理事長の暴走を止められませんでした。業者から多額の現金をもらったと報じられていた田中理事長についても解任できないどころか、記者会見すら開かず、今回、脱税での逮捕に至った。大学ガバナンスへの世間の関心が一気に高まるのではないでしょうか」

大学理事長経験者の自民党議員

 それでも、「法改正にまで至るかどうか」と話すのは、前出の社会部記者だ。

「自民党の大物議員の中には大学理事長経験者もいて、党としての議論で法案の国会提出を許さないだろうと、反対派の経営者たちは期待しているようです。さらに、『大学経営を知らない評議員に権限を持たせてもガバナンス強化にはならない』と自民党の政治家たちを説得していて、党の文科部会で反対させようとしています」

 また、文教族と呼ばれる自民党議員たちの関心は小中学校の義務教育で、大学にはほとんど関心がないとされる。

「文教族は大学経営者に配慮して法案を潰す方向に動くかもしれないと考えていました。ですが、田中理事長の逮捕で、岸田文雄首相や末松信介文科相も改革せざるを得ないと考えるのではと期待しています」(同)

デイリー新潮編集部

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