日大のドン「田中理事長」逮捕で私大ガバナンス改革は待ったなし それでも反対する人々の面の皮

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「白紙撤回させてやる」

 ついに、日本大学の田中英寿理事長が5300万円を脱税したとする所得税法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。不祥事が相次ぐ私立大学のガバナンス(統治)体制にも、メスが入るきっかけになるのか――。

 12月3日、文科省に設置された「学校法人ガバナンス改革会議」が、文科大臣に対して私学法改正などによるガバナンスの強化を求める報告書を提出する。理事会をチェックする機能を評議員会に持たせ、他の財団法人や社会福祉法人並みにするという、世間から見れば「当たり前」の改革提言になりそうだが、実は法改正にまでたどり着けるかどうか最後まで分からないのだという。いったいどういう事なのか。

「これまでやりたい放題が当然だったオーナー系の大学経営者を中心に、大反対の声が上がっているのです。理事長として大学を半ば私物化してきた『大物』に限って政治家に近く、政治力を持っていると自負している。今回は閣議決定で『他の公益法人並みの改革』とされているのに、『そんなものは白紙撤回させてやる』と息巻いている理事長もいます」

 こう語るのは、大手新聞で大学経営を取材してきた社会部記者だ。

他の公益法人と同水準に

「学校法人の理事長は絶対的な権限を握っています。現状の評議員会は理事長の諮問機関に過ぎず、意見を言うだけで理事を選解任する権限もありません。しかも現役の職員や教員でも評議員になれる制度のため、理事長が自分の言うことを聞く人を評議員にしているところが多いのです。つまり、理事長を誰も牽制できない、逆らえる人など誰もいないのが今の学校法人という組織なんです」

 そんな特異な組織を、せめて他の公益法人と同水準に変えようと設置されたのが「ガバナンス改革会議」だ。文科省の関係者が明かす。

「大学は税制上の恩典を受けているほか、国から多額の補助金をもらっています。にもかかわらず不祥事が後を絶たないため、政治サイドからガバナンス改革を迫られ、改革が閣議決定されたという経緯があります。文科省はもともと学校法人経営者寄りで、前身の有識者会議が今年3月に出した報告書では評議員会の権限強化を明記せずに中途半端に終わらせていました。しかし、閣議決定された以上、さすがに抵抗するわけにはいきません」

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