日本人はマスクを外せなくなる? コミュニケーションに起きている異変…「顔学」の第一人者が警鐘

国内 社会

2021年11月30日

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 時短制限も解除され、ようやく一息つくことができている秋の日本列島。だがその「一息」も、アレのせいで息苦しいものに……。マスク着用を強いられて1年半超が経過。人間の順応力は凄まじく、不便な生活に慣れる一方で、大事なものを失おうとしている。

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 息苦しくて暑苦しい上に、面倒くさい。そんなマスク生活を強いられて1年半以上が経ちました。感染状況が落ち着いているとはいえ、未だにマスクを手放すことができない状況が続いています。とはいえ、いずれはマスクなしで過ごせる日が訪れるはずです。

 しかし、いざその日がやってきたとして私たちはマスクを外すでしょうか。実のところ私は懐疑的です。つまり「強制的」にマスクをしなければならない時代が終わっても、「自主的」にマスクをつける時代が到来する可能性があるのではないかという気がしているのです。なぜなら、マスクをしていたほうが「楽」であることに、我々は気づいてしまったからです。

〈こう語る原島博・東大名誉教授は「顔学」の第一人者である。

 もともと電子情報工学を専門としていたが、研究の過程で人間のコミュニケーション法に興味を持ち、そこでは「顔」が大きな役割を果たしていることに気づく。そして1995年に「日本顔学会」を発足させ、その後同会の会長に就任。以来、顔に関する考察を続けてきたが、昨年、そんな原島教授にとって大変興味深い事態が起きる。コロナ禍、すなわちマスク社会の出現である。顔の下半分を覆い隠すマスク生活において、改めて顔の意味や価値、役割について考えさせられたという。〉

 95年は日本のインターネット元年と呼ばれる年でした。人類史上、長年にわたり当たり前であった顔、つまり表情を通じてのコミュニケーションが、この頃から変わり始めました。

 当初はインターネットの技術も未発達で、ネット上でお互いの顔を見せ合うことは難しく、これからネット上では顔を見せず、隠した上でのコミュニケーションが主流となっていくのではないか。そうなった場合はコミュニケーションの主体である人間の人格にも影響を与えるかもしれない。そんなふうに考え、「匿名」ならぬ「匿顔(とくがん)」という言葉を作り、顔を隠してのコミュニケーションについて考えを深めてみようと思い至ったのです。

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