新庄は17打数6安打、江川卓は突然の引退会見…日本シリーズを最後に引退した7人のスター選手

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“男気”を見せたあの選手

 次は惜しくも日本一を逃したものの、シリーズ出場を花道に引退した選手たちだ。まずは投手から。真っ先に思い浮かぶのは読売の江川卓である。87年シーズン、32歳の江川は26試合に登板し、13勝5敗。防御率も3.51の好成績を挙げた。19歳の桑田真澄と先発ローテーションの中心を担い、王貞治監督4年目にしてのリーグ初優勝に大きく貢献したのである。

 シリーズでは直近5年間で3度の日本一と黄金時代を迎えつつあった西武と対戦。後楽園球場で行われた第3戦に先発する。8回を投げ、被安打4の2失点と好投しながらも、2本のソロアーチを献上。頼みの味方打線も振るわず、1-2で敗戦投手となった。結局、このシリーズでチームは2勝4敗。日本一に輝くことはなかった。

 そしてシリーズ終了後に突然の引退会見を開いた。全盛期を過ぎたとはいえ、この年7完投を記録し、8年連続二ケタ勝利を継続中だっただけに誰もが予期せぬ引退劇だった。きっかけはこのシーズン終盤の9月20日の広島東洋カープ戦(広島市民球場)。法政大学の後輩に当たる相手4番・小早川毅彦に対して強気の内角直球勝負にこだわり、逆転サヨナラ2ランを浴びたことだった。この瞬間、自分の直球の力が落ちたことを思い知らされ、自身の野球人生の終わりを悟ったという。数年前から右肩痛に悩んでいたことも一因となり、球団からの強い慰留を押し切って現役を引退した。

 現役最終年に二ケタ勝利を挙げ、日本シリーズ登板で現役を引退した投手といえば、広島の黒田博樹もそうだ。メジャーチームからの巨額のオファーを蹴り、14年オフに古巣に復帰。すると15・16年と2年連続二ケタ勝利をマーク。16年にはチームの精神的支柱としてこの年、チームを25年ぶりのリーグ優勝に導く原動力となった。

 引退発表はあまりに突然だった。シリーズ開幕前の10月18日。開幕前から右肩、右足首に痛みを抱えていた黒田は「リーグ優勝が決断の一つの大きな要因だった」と突然の引退表明。こうして野球人生の集大成が、北海道日本ハムとの日本一をかけた大舞台となったのである。

 シリーズは広島の2連勝で幕を開けた。一気に王手を狙い、相手のホーム・札幌ドームに舞台を移しての第3戦で黒田はシリーズ初先発を果たした。初回に1点を失うものの、その後は粘って5回を被安打4に抑える好投をみせる。

 しかし2-1とリードして迎えた6回裏、黒田の現役最後のときは突然訪れた。1死から対峙したのは“二刀流”大谷翔平。黒田はこのスター相手に渾身の3球を投げ込み打ち取ったのだが、顔を歪め自らマウンドを降りてしまったのである。なんとかマウンドに戻るも、両足をつっていたため、再び投球をすることはできず、無念の降板。5回2/3を投げ、85球、被安打4、奪三振1、失点1。シリーズが第7戦までもつれ込めば黒田の2度目の登板が予想されたが、この試合から広島は悪夢の4連敗。これが黒田の現役最後の試合となってしまったのであった。広島はチームの大黒柱・黒田の花道を日本一で飾ることは惜しくも叶わず。それでも札幌ドームで投げた渾身の85球はまさに黒田の“男気”そのものだったといえよう。

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