本田望結インタビュー 青森山田の高校生活、モヤモヤを晴らしてくれた中村玉緒さんの言葉

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「絶対涙を流してはいけない」

 俳優としても、「演技」を考えるうえで印象に強く残った経験がある。山田洋次監督の『母と暮せば』(2015年公開)で、風間民子を演じたときのことだ。

「『家政婦のミタ』以降、仕事で“本田望結”を指名していただけることも増えましたが、この作品はオーディションを受けて参加しました。役者として山田監督の作品に携わりたいという強い思いもあったし、子役が出ることのできる映画も少ないのでチャンスだと思ったんです。でも、オーディション会場のドアを開けて入った途端、監督を中心とした山田組のスタッフさんたちのオーラに圧倒されてしまいました。空気までが変わったようで、あまりの緊張にオーディションの後、直前まで覚えていたはずのセリフがすべて飛んでしまったほどです。

 オーディションでは部屋に入るシーンだったので、私は扉を開けるときに『失礼します』と、アドリブを付け加えてしまったんです。すると『台本に書かれているセリフ以外は言わないでください』と注意されました。監督は余計な言葉を必要としないんだなと思い、目線やまゆげの動き、顔の向きなどに注意してお芝居をしたことを覚えています。

 あるシーンで、民子は泣いちゃうだろうなと思っていたのですが、監督から『絶対涙を流してはいけない。我慢して』と演技指導がありました。映画の公開後、『民子ちゃんを見て泣いてしまいました』という声をたくさんいただいたのですが、登場シーンでは民子は涙を見せていません。作品を見て泣くのは、登場人物の涙につられるからと先入観を持っていたので、“泣かなくても伝えられること”について、とても考えさせられました。

 本田望結という名前ではなく、オーディションで評価していただいたことも自信につながりましたし、監督から演技についても認めてもらえた瞬間は、何事にも代えがたいうれしさがあります。本当に貴重な経験でした」

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