日ハム、新庄ビッグボス支えるコーチ陣発表 地味な人選から見えてくる狙いとは

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

指導者として経験がある人材を多用

 ただ、そんな中でも驚きだったのがヘッドコーチに就任した林である。現役時代はダイエー(現ソフトバンク)、日本ハム、ロッテで14年間にわたってプレーしたが、一軍通算94安打と主力ではなく、内野のユーティリティプレーヤー的な存在だった。

 引退後はソフトバンクのコーチ、日本ハムのスカウトや打撃コーチなどを務め、2018年からは再びスカウトとなっている。監督の右腕とも言うべきヘッドコーチに、前年までスカウトだった人材を配置するのは極めて異例だが、現役時代に華やかな実績がなくても、コーチとスカウトとしてグラウンドの内と外を長く経験してきたことが評価されての抜擢と言えそうだ。

 さらに興味深いのは、林以外にも現場やNPB以外で指導者として経験がある人材を多く登用している点だ。武田は留任ではあるが、コーチに就任する以前の3年間はBCリーグの石川ミリオンスターズ(来季から日本海オセアンリーグに所属予定)でコーチ、監督だけでなく、フロント業務にも携わった経験を持っている。

 新たに二軍監督に就任した木田は、メジャー経験があるだけでなく、現役最後の2年間は石川でプレーしており、引退した後の2015年から4年間はGM補佐という役割でフロント業務も担っていた。また、二軍投手コーチの多田野も木田と同様にメジャーと国内の独立リーグでプレーした経験があり、2018年からの4年間はスカウトを務めている。このほか、育成コーディネーター兼投手コーチの伊藤と育成コーチの川名はスカウトからの転身組だ。

「スカウティングと育成で勝つ」

 こういった人事の背景には「スカウティングと育成で勝つ」というチーム方針の再確認という意味合いが強い。球団は11月16日に西川遥輝、秋吉亮、大田泰示のFA権を取得した主力選手3人について“ノンテンダー”という日本球界では珍しい表現で自由契約にすることを発表したが、これもあえてポジションを空けることで若手の抜擢を加速させる狙いと見られている。

 重要になってくるのは、選手の輩出スピードのアップであり、そのために現場のコーチ以外の経験を持つ人材を重視したという見方ができる。林は九州担当のスカウトだったが、それでも他のコーチより選手のことをアマチュア時代から理解しており、伊藤もGM付特命スカウトという立場でエリアにとらわれず多くの選手を視察してきた実績がある。また、メジャーや国内の独立リーグを経験したコーチが多いことで、今までにないアイデアが出てくることも期待できるだろう。

 コーチ陣の編成に“ビッグボス”がどこまで関与しているかは不明だが、球団としての狙いはよく分かる人事であることは間違いない。スカウティングと育成で輩出された選手たちをビッグボスがどのように活用していくのか。今後もその動向から目が離せない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。