【W杯予選】柴崎で“プチ冒険”ではなく、「三笘」「古橋」をなぜスタメンで起用しないのか

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2位でも油断は禁物

 これが後半36分の決勝点につながった。オマーンのスローインを中山がカットしてすぐに三笘に付ける。三笘はタテに抜け出し倒れながらクロスを送ると、伊東がボレーでゴール中央に決めた。9月2日のホーム・オマーン戦で喫した決勝点と崩したサイドは違うが、似たようなゴールだった。

 伊東はこの試合で攻撃に関して存在感を発揮したとは言えない。ポジション的に消耗の激しいダッシュを繰り返しての連戦であり、さらにオマーン戦は複数人のマークに遭った。それでも相手を蹴散らすくらいのパワフルなドリブル突破を見せて欲しかった。

 とはいえ、2試合続けての決勝点である。いずれもシュートの瞬間は実に落ち着いていた。「勝点6」の獲得に貢献した“ラッキーボーイ”と言える活躍だ。

 この日の勝利と、オーストラリアが中国と1-1で引き分けたことで、日本(勝点12)は2位に浮上した。とはいえ3位のオーストラリア(勝点11)との差はたったの1。来年1月27日から再開される最終予選でいつひっくり返されるか予断を許さない状況に変わりはない。

メンバー固定の弊害

 ここまで6試合を終え、日本の失点3はサウジアラビアと並んで最少だ。少なくとも対戦相手にモンスターのようなストライカーはいない。このため吉田麻也と冨安健洋を中心とするDF陣が大きく崩れることは考えにくい。

 となると、今後の課題はやはり攻撃陣ということになる。6試合の総得点5は、オマーンや中国よりも下だ。「攻撃は水もの」と言われる。三笘のドリブルが効果的だったのは、古橋の飛び出しが脅威だったのは、「相手が疲れていたから」という意見にも素直に耳を傾けよう。

 しかし、だからこそスタメンで三笘、古橋のプレーを見たい。左SBには中山、中盤は遠藤、田中、守田でスタートしつつ、旗手怜央をリザーブに置き、前線は左から三笘、古橋、伊東で、控えは前田大然というメンバーだ。

 森保監督はカタールW杯での目標をベスト8に置いている。しかし、これまでの戦いぶりとスタメンから、それを信じているファン・サポーターは皆無だろう。なぜならアジア予選を突破するにも汲々としているし、チームの若返りも進んでいないからだ。

 まずは負けないという“手堅い試合運び”は理解できる。それと“手堅いメンバー”の起用はイコールではないはず。“三笘”という成功体験があるのだから、森保監督には今後も選手起用でチャレンジすることを躊躇(ためら)わないで欲しい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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