「スシロー」「くら寿司」が“回らないサービス”を続々… 1000円超「すき焼き海鮮弁当」の狙い

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くら寿司は「ドライブスルー」を拡大

 回転寿司チェーン業界のトップはスシローだが、これを追いかけるのがくら寿司だ。こちらの取り組みもなかなかユニークである。同社の広報部によると、

「当社ではドライブスルーの『くるまdeお持ち帰り』実施店舗を徐々に拡大してきました。現在、全店舗のおよそ4割にあたる、約200店舗で実施しています。メニューでは、お子様がご自宅でお寿司屋さんごっこができる『おうちでくら寿司セット』(1080円)や、店内で人気のうどんとセットになった『人気寿司&うどん サンキュー!セット』(390円)が好評です」

 そう、寿司はテイクアウトをするにしても、人数分を買うと“かさばる”ことがままある。その点、くら寿司のドライブスルーは、車を持っていればなかなか使いやすい。ドライブスルーといっても、マクドナルドやスターバックスの対応店舗のように専用の窓口が店にあるわけではなく、駐車場内の指定された場所に車を止め、店員が運んでくる商品を受け取るという仕組みだ。アナログといえばアナログだが、昨夏の段階で「くるまde~」対応店舗は100店舗ほどだったから、1年で2倍に増えたことになる。むしろ導入ハードルの低さがあったからこそ「非接触」を求められたコロナ禍に素早く対応できたと言えるだろう。

 人気のメニューが“お寿司屋さんごっこ”ができる商品というのも、「ビッくらポン!」(食べた皿の枚数に応じて遊べるくじゲーム)でキッズの心を鷲掴みにするくら寿司らしい。シャリと具材が別々についてくるという構成で、昨年までは「くら寿司」の紙製帽子もついてくるという凝った内容だった。同社の広報部はこうも語る。

「お持ち帰りは、コロナ禍で改めてその利便性に注目頂いたように思います。一時期はコロナ前に比べ、3倍程度にご注文が増えました。緊急事態宣言があけた今でも2倍程度を維持しています。イートインとお持ち帰りをうまく使い分けてくださっているようです」

もはや「寿司」すら売らない業態も

 テイクアウト以外でも、スシローは食材の予約販売「スシロー市場」を昨年につづき期間限定ではじめる。年末年始にあわせた冷凍食材を、事前注文を受けて店舗で販売するもので、お渡し期間は21年12月1日~22年1月4日まで。ラインナップには「あわびやわらか煮」(2180円)や「北海道産上いくら」(3940円)など。

 もはや売るのは寿司ですらないというわけだが、それはくら寿司が大阪府貝塚市で運営している「くら天然魚市場」も同じ。こちらは漁場直送の海鮮を売る「魚屋」だ。毎朝8時にLINEやSNSでその日の入荷がアナウンスされ、たとえば11月15日のお勧めは「天然もみじまだい」(1166円)「天然あおりいか」(842円)だった。

 回転寿司チェーンが「回転しない」業態に注力するのはなぜか。大きいのは、イートインに依存した経営のリスクがコロナ禍で明らかになったためだろう。ここ数年、スシロー、くら寿司ともに都心に店舗を増やしているが、加えてコロナ禍によって空きテナントが増え、テイクアウトに向いている駅前などへの出店が可能になった。とはいえ、ただテイクアウトに参入しただけでは、既存や街中の宅配寿司と競合してしまう。その対応策として、スシローのコラボ弁当やくら寿司のごっこセットなど、ちょっと変わったメニューも用意しているのだ。

 この2社ともなれば、海鮮の仕入れに関しては、他にない一日の長があるだろう。事業ポートフォリオ(組み合わせ)を拡大し、魚の総合企業として、今後は競争していくのではないだろうか。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

デイリー新潮編集部

2021年11月17日掲載

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