お前はもう死んでいるとばかりに…岸田首相が安倍元首相に“嫌がらせ”で関係悪化を 心配する声

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友情もあるが勝負は別

 だが、物事には表と裏がある。いずれも岸田氏サイドから見れば、その風景は大きく違う。国民の人気が高い河野太郎前ワクチン担当相への危機感から、総裁選で支援を求めたものの安倍氏には高市氏の全面支援に回られ、1回目の投票結果は高市氏が国会議員票で岸田氏(146票)に次ぐ2位の114票を獲得。

「安倍氏は『河野潰し』で岸田氏を勝たせるために高市氏を担いだとも言われましたが、本気で高市氏を勝たせようと全面支援していた。下手をすれば、岸田氏と順位が逆になっていた可能性もありました。岸田、安倍関係には友情もありますが、勝負はまた別ということでしょう」(自民党中堅)

 との声もあがる。

 振り返れば、岸田氏はたびたび安倍氏に苦汁を飲まされてきた。直近では、昨年の党総裁選をめぐる対応があげられる。2018年の総裁選で立候補を模索した岸田氏は、長期政権を築いていた安倍氏からの「禅譲」を期待して出馬を見送った。「ポスト安倍」の筆頭格として意欲を示し続け、安倍氏や麻生氏と良好な関係を維持してきたのも「次」に両氏の支援を期待してのものだ。

 しかし、2020年8月に安倍氏が体調悪化を理由に首相辞任を表明。岸田氏が当然の流れとして次期総裁選での支援を求めた際、安倍氏は首を縦に振らなかった。安倍路線を継承した菅義偉氏らとの総裁選は、菅氏が377票、岸田氏は68票。一時は「政治生命を絶たれた」といわれるほどの大敗を喫している。

30万円給付で赤っ恥

 他にも苦い記憶がある。新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ国民への支援策として、自民党政調会長だった岸田氏は「困窮世帯への30万円給付」案をとりまとめ、政府に実現を求めた。この案は当時の安倍首相と決めたものだったが、二階幹事長や公明党の反対から急きょ方針転換を余儀なくされ、党内での求心力が急落する「赤っ恥」をかかされている。

「普通に考えれば、あれだけ期待していた『後継指名』を袖にされ、政治家として終わりかける危機を強いられれば、安倍氏に対して良い感情はないでしょう。本音では何度も裏切られたと感じていると思いますよ」

 全国紙政治部デスクは、こう岸田氏の複雑な胸中を探る。党役員・閣僚人事で安倍氏の意向を忖度せず、総選挙の群馬1区の公認争いでは、安倍氏が「公認候補でなくなることはあり得ないと思っている」と公言していた尾身朝子氏(細田派)ではなく、中曽根康隆氏に軍配をあげた。

 成長と分配、新しい資本主義を掲げてアベノミクスからの修正を目指す岸田氏。自民党第3派閥の竹下派で会長代行を務める茂木敏充元外相を新幹事長に迎え、岸田派・麻生派・竹下派という主要3派で政権運営を安定させたいとの思惑も透けて見える。年末に控える来年度予算案の編成や税制改正大綱の策定、国家安全保障戦略の改定などで「岸田カラー」は打ち出せるのか。寒風が訪れる季節、2人の関係がさらに冷え込むことを不安視する向きは多い。

取材・文 小倉健一 ITOMOS研究所所長

デイリー新潮取材班編集

2021年11月8日掲載

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