市販薬と病院の薬、効果の違いは? 薬剤師が教えるドラッグストアの賢い使い方

ドクター新潮 医療

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下痢止めは原因に応じて使い分けを

〈緊急で買いたい薬といえば下痢止めがあるが、少々店員に尋ねづらくもある。〉

 下痢については、まずは脱水症状とならないために、水分補給をきちんと行うこと。そして安静にすることが重要です。

 ただ、症状を緩和させたり、受験や大事な仕事など、「ここぞ」の時のために薬を持っておきたいという人もいるでしょう。

 下痢止めは、その原因によって使い分けることが大事です。

 緊張やストレスによる一過性のものであれば、腸の動きを止めるロペラミドという薬が効果的です。ただし、ノロウイルスや細菌性食中毒などに対してこの薬を使うと、病原体の排出が遅れるので飲んではいけません。

 軽い食あたりでしたら、腸の環境を整えるビオフェルミン、腸の動きを無理に止めずに腸内の水分を調整する五苓散(ごれいさん)などが選択肢となります。

 また、過敏性腸症候群に対しては、セレキノンSという薬が薬局やドラッグストアで手に入ります。

 理由がはっきりしているなら、こうして自分で選んでいただければと思います。ただし、食中毒でもO-157のように生命に関わるケースもありますので、高熱や、今まで経験した下痢と何か違うと感じたら、早めに病院を受診されることをお勧めします。

処方薬から市販薬への転換という流れ

〈さて、ここまで代表的な症状について、市販薬の使い方を伺ってきた。市販薬といえば低リスクなものという印象があるが、危険性はないのだろうか。〉

 市販薬にも思わぬリスクがあります。

 たとえば市販の鎮痛薬は、1カ月10日以上の服用が数カ月続くと、鎮痛薬が原因の頭痛が起きることがあります。もともと頭痛のある人が頭痛薬を頻繁に飲むことで症状が悪化し、それを抑えるためにさらに頭痛薬を飲むという恐ろしいループに入ることがあります。

 咳止め薬に含まれるコデインは習慣性があり、その成分が含まれる「ブロン錠」などを若者が乱用するケースが後を絶ちません。

 ツイッターなどを観察していても、これらの薬を乱用しているらしい人はかなり見かけます。店頭では、明らかに乱用しているとわかる客には私も売らないようにしていますが、それが原因でトラブルになることもありました。

〈処方薬から市販薬への転換の流れは、今後も続くのだろうか。〉

 大きな流れとしては、これが続いていくと思います。また注目すべき事柄として、有識者会議などで「市販薬として手に入るものは、公的保険から外してもよいのではないか」という意見が出されています。実際、米国では市販薬にスイッチされたものは医療用医薬品から外れることになっています。

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