気鋭の法学者・木村草太が薦める紅茶店、菓子店は? 奥深い紅茶の魅力を解説

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思考の袋小路に入ったときに……

 ところで、紅茶は紅茶だけでも美味しいが、お菓子があれば楽しさは倍増する。学生時代、月の予算に余裕があると、本郷三丁目駅から大学へ向かう途中で、近江屋洋菓子店にてレーズンビスクィを購入したものだ。これが何とも言えず、病みつきになる。20年食べ続けても飽きない。近江屋洋菓子店の本郷店は閉店になり、現在は神田淡路町の神田店のみとなっている。そんなわけで、仕事で神田界隈に行くときには、神保町から淡路町へと、靖国通りの裏の細道を歩いてはしごすることになる。静かな道を歩くのは、思索にも良い。

 いや、これには嘘が入っている。淡路町から神保町へとはしごするのが本当だ。神田の坂を上るのは、ちょっとばかりきつい。いや、あの坂をきついと感じるのならば、体力づくりのために、あえて神保町から淡路町へと上るのが正しいぞ。いや、おいしいもののために正しさを追求するのは正しくない。あれ、正しさを追求するなと言いながら、まだ正しさを求めるのはおかしい。などと、思考の袋小路に入ったところで、紅茶で一息つくのが、私の日常だ。

木村草太(きむら・そうた)
1980年神奈川県生まれ。法学者、東京都立大学教授。著書に『むずかしい天皇制』(大澤真幸共著)など。

デイリー新潮編集部

2021年10月30日掲載

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