世良公則が語る「ワクチンパスポート」への違和感 打てない人が差別される可能性も

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90%の減益

 そもそも、われわれのライブは、「緊急事態宣言が解除されたから、明日から営業開始」というわけにはいきません。準備に最短でも8カ月はかかり、利益が出ても、スタッフに分配するには、さらに数カ月かかる。その間、補償はありません。報道されませんが、政府のデータを見ても、公演を中心とする音楽業界の収益は、2019年とくらべ、90%の減益。ほかにも多くの業種で、同じことが起きていると思います。

 この状況に加え、いまライブも、ワクチンパスポートがある人だけを入れることが推奨されています。しかし、そうした瞬間、ある人たちは音楽の場から締め出され、すでに起きている分断が、さらに深まってしまう危険性があります。

 また、飲食店への支援と、ほかの傷んだ業界への支援とで中身に差があり、分断を生んでいることも無視できません。文化や芸術を担う業界への支援が少ないのは、僕らに政治への影響力がないからでしょうか。しかし、文化や芸術が人々に与える大きな影響を、軽視してほしくはないです。僕は声をあげていますが、多くのファンがヒステリックに動くことを懸念するなど、それぞれの理由で沈黙されているアーティストもいる。僕たちは、なにも考えていないわけではないのです。

 ヨーロッパ諸国、中でもドイツでは、コロナが感染拡大しはじめた当初に、メルケル首相が自ら、文化に携わる人々への支援をいち早く発表し、文化や芸術を支えました。「文化や芸術がないと国は豊かさを失う」と明言されましたが、日本はどうでしょう。

 いまの日本の補償では、フリーランスや一人社長などは、離職したり、会社を閉じたりして、業界に戻ることができません。莫大なキャンセル料を背負い、自ら死を選んだ社長もいます。自粛要請する際、「国がキャンセル料をいくらか負担します」というアナウンスがあれば、死を選ぶことはなかったかもしれません。自粛要請と補償は、セットでないと、経済苦による自殺者が出かねないのです。

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