世良公則が語る「ワクチンパスポート」への違和感 打てない人が差別される可能性も

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ワクチンパスポートが分断の引き金に

 この状況は危険です。「ワクチンが免罪符になる」という誤解が広がれば、社会に必ず負の影響が生じるでしょう。たとえば「他人に感染させないためのワクチンを打たないとは、他人のことを考えられない自己中心的な人だ」と判断する人が増えれば、未接種者への差別にもつながります。

 そこにワクチンパスポートが導入され、免罪符のように扱われるなら、分断の引き金にもなりかねないと懸念しています。

 ワクチンは、心情的に打ちたくない人も、体質的に打てない人もいる。そういう人たちも、検査などワクチン以外の方法で、社会参加できるシステムこそが必要で、それは政府が先導して作るべきです。

 たとえば、海外に渡航する際、相手国が入国の条件にしているなら、ワクチンパスポートも必要でしょう。あるいは、飲食店などがドレスコードのように、ワクチンパスポートや陰性証明の提示を求めるのも、民間の営業方針として成り立つのでしょう。しかし、それも政府や分科会がワクチンの効果について、国民に正しく説明していればこその話。ワクチンを打っていれば他人に感染させない、と国民が誤解したままなら、分断が生じかねません。

 ワクチン接種者も未接種者も安全、安心に共存できる方法を、医学的、科学的に検証したうえで、政府がしっかりと提示してほしい。ワクチンパスポートを導入するなら、陰性証明をはじめ、ワクチンを打っていない人も同等の権利を行使できる仕組みを、同時に構築することが不可欠です。

打たない人が差別される

 ところが感染症の専門家などは、あたかもワクチンを打てば、すべてが解決するかのような発言をしていました。少なくとも国民はそう受け止めています。しかし、それでは打てない人、打たない人への差別につながり、分断を招いてしまいます。多くの国民が、「ワクチンとは他人に感染させないためのもの」と誤解している状況では、ワクチンパスポートを持っていない人が、「感染が拡大したのはお前のせいだ」と敵視されかねません。

 そもそも日本は、公衆衛生上、非常にすぐれた国です。コロナ禍以前から手洗いの習慣があり、家に入るときは靴を脱ぎ、咳やくしゃみをする際は手で口を押さえるなど、衛生的な振る舞いが身についていました。それがコロナ禍では非常に役立ち、欧米にくらべて感染が拡大しなかった一因になったと考えられます。

 ですから、まずは日本の公衆衛生のすぐれた部分を見直し、高機能のマスク着用や換気の徹底など、基本的な対策を周知させるべきです。新型コロナウイルスが消滅しない以上、インフルエンザや風邪にかからないための対策と同様に、新型コロナに感染しないためにはどう気をつけるべきか、それを今後の日本人の生活にどう根づかせるのか。政府はそういう視点で検証し、発信してほしい。

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