インドネシアで日本人の「美人局」被害が続出 見覚えのない薬物で逮捕、警察もグル

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 現在インドネシアでは、首都ジャカルタを中心に、日本人男性が麻薬の不法所持で摘発される事件が相次いでいる。だが彼らは、美人局の被害者なのだ。

 9月末までの6カ月で、少なくとも3人の男性が被害に遭ったという。在留日本人のあいだでは注意喚起がなされており、10月初旬には、現地在住の日本人のSNSアカウントに〈要注意〉との文言と共に若いインドネシア人女性の写真がアップされた。どうもこの女性が一連の美人局の仕掛け人らしい。投稿には被害事例も併せて記載されていた。

巧妙なハニートラップの手口

 ジャカルタ南部には日本食レストランやカラオケバーが並ぶ「ブロックM」と呼ばれる一角がある。コロナ禍でも、感染拡大防止対策を講じたうえでの営業、あるいは「常連客に限定した」営業を行っていた。こうしたカラオケバー、またはネットの交際アプリを通じ、女性と知り合った日本人男性が被害に遭っている。男性たちの目的はもちろん、男女の関係である。

 在留日本人の間で流れている情報によると、その手口は以下のようだ――ホテルなどに2人でチェックインした後、女性が「ちょっと買い物がある」「車の中に忘れ物をしたのでとってくる」などといって部屋を後にする。残された日本人男性は期待に胸を躍らせながら女性の帰りを待つわけである。女性がハンドバッグを部屋に残したままであることは気にも留めない。

 すると部屋の扉がノックされ、警察官を名乗るいかつい男たちが入ってくる。「麻薬所持の情報があり捜査している」という彼らは、部屋に残されている女性のハンドバッグの中から麻薬を発見する。

「これは女性のハンドバッグであり自分のものではない」と主張するも、すでに女性は"とんずら"しており、行方は知れない。「その女性はどこにいるのか」と警察に問われても答えられず、"署までご同行"となる。「あなたには麻薬の不法所持の容疑がかかっている」と告げられ、ようやく事態がただならぬ方向に進んでいることを被害者は分かり始めるが、時すでに遅しである。

 その後、警察官は「表沙汰にされたくないでしょう」「会社や家族には知られたくないでしょう」とし、示談を勧める。断れば禁錮刑が待っているため示談に応じるが、それも相手の思うツボだ。警察官から紹介された、示談交渉を進める弁護士も悪徳弁護士なのだ。示談金を目当てにした美人局というわけである。

 警察がグルになって不法行為を行うというのは、日本の感覚では信じがたいかもしれない。だが、インドネシアでは、けっして珍しい話ではない。給与が低く、アルバイトをしなければ生活が苦しい警察官たちは、本業とは別にビルの夜警や私設のガードマン、VIPの車をパトカーや白バイで先導するといった"副業"を行っている。そしてそうした仕事は、時に非合法なものも、ある。今回の手口も、金目当ての警察官が協力したとみて間違いない。

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