大躍進「ヤクルト」と歴史的失速「巨人」 明暗分かれた“あまりに大きすぎる差”

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与四球はリーグ5位

 一方の巨人は、8月まではデラロサの代役を務めたビエイラがフル回転の活躍を見せていたが、9月以降は低迷。原辰徳監督は、わずかな球数で次々と投手を交代させる「スクランブル継投」で何とか凌ごうとしたものの、結局はそれも上手くいかなかった。開幕前に決めていた勝ちパターンが崩れた時に立て直すことのできたヤクルトと、立て直せなかった巨人の差がデータによく表れている。

 投手成績で、もうひとつ両チームに大きな差が生まれているのが、与四球の数だ。リーグトップのヤクルトに対して、巨人はヤクルトより100以上多いリーグ5位に沈んでいる。

 神宮球場、東京ドームとともにホームランが出やすい本拠地で戦っており、被本塁打数はリーグワーストを争っているが、ホームランを打たれることを恐れて、多くの四球で傷口を広げている巨人と、ホームランは打たれていても逃げることなく四球の数を抑えているヤクルトの差がはっきりと出ている格好だ。

目立つのは出塁率の差

 打撃面では、ホームラン数こそ巨人がリーグ1位の数字となっているものの、それ以外は軒並みヤクルトが上回る。特に目立つのが、出塁率の差だ。ヤクルトは村上宗隆や中村悠平、山田哲人と出塁率のリーグ10傑に3人がランクインしているが、巨人は10位の坂本勇人だけ。村上とホームラン、打点のタイトルを争う巨人・岡本和真は、ヤクルト・塩見泰隆や青木宣親よりも低い出塁率となっている。

 初球から積極的に打っていくスタイルは、決して悪いものではないが、中軸もその前後を打つ選手たちも、しっかりボールを見極めてチャンスを作るという点では、ヤクルトが大きく上回っていることは間違いない。

 ヤクルトは、野村克也監督時代から「再生工場」と呼ばれていたように他球団から移籍してきた選手が多く活躍する土壌があるが、前述した今野や近藤に加えて、巨人からトレードで加入した田口麗斗もチームに欠かせない存在となっている。クローザー出身の高津臣吾監督が、チームの特徴を最大限生かした結果といえるだろう。

 それに対して、巨人は今年もお家芸と言える“大型補強”を敢行したが、新加入の選手が軒並み結果を残すことができず、広島から移籍3年目の丸佳浩が成績を落としたことも痛かった。チームと監督のカラーを出せたヤクルト、これまでのやり方が機能しなかった巨人、その差があらゆる点で数字となって表れたのが今シーズンだったと言えるのではないだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月22日掲載

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