国際ロマンス詐欺で不良トルコ人が台頭 被害女性は「今も彼の気持ちは嘘だと思えません」

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愛してる、美しい、大好き

 実際、トルコ人不良グループによる詐欺被害に遭った日本人女性にも話を聞くことができた。彼女は50代とは思えない若々しさで、女優の吉瀬美智子似の美人。30代で離婚し、女手ひとつで娘を育て上げたという。

「元夫には養育費を一切もらえませんでした。私たちの都合で離婚したから、娘にだけはつらい思いをさせたくなかったし、金銭的にも苦労だけはかけないようにしようと、これまでは仕事ばかりの毎日でした。娘が大学を出て自立したのを機に男性との出会いを求めて、3年ほど前、マッチングアプリに登録しました。

 それまでもいろいろと声をかけてくれる男性はいましたが、今年に入ってすぐ、私みたいなオバちゃんにも、愛してる、美しい、大好き、とメッセージをくれる男性が現れ、失われた青春を取り戻せるような気がしました。彼が30代のトルコ人でした。かなりのイケメンで、メッセージをやり取りしているうちに、すぐに好意を持ちました。彼はトルコに離婚した奥さんと子どもがいて、生活費を支払うのが大変だと話していたんです。自分は元夫から何の援助もなくて苦労してきたから、彼を家族思いの素敵な人なんだと思ってしまい……」

映画のような恋をしている

 離婚歴や子どものことなどを話す様子に、むしろ誠実さを感じたという。

「娘が自立したので経済的にも余裕ができていたこともあり、困っている彼のためにと、一度も会っていないのに、指定されたトルコの口座へ何度か30万円を振り込んでしまいました。『ロマンス詐欺』という言葉も知っていましたし、少し怪しいとは思いましたが、イケメンの外国人男性と映画のような恋をしている、という現実をあきらめたくなかったんです。

 ロマンス詐欺はお金を振り込むだけで1度も会わずに終わることが多い、と聞いていたのですが、彼とはお金を振り込んだ後に2回会ったので、“これは詐欺ではない”と自分自身に言い聞かせていました。彼とは食事をしてホテルに行き、体の関係も持ちました。そのときに結婚しようと言ってくれて、とても幸せだったんです。でも、5月になって日本で飲食店を経営したいと言う彼に100万円を渡した後から、電話もプーッ、プーッと鳴るだけでつながらず、メールも宛先不明で戻って来てしまう。マッチングアプリのアカウントも消え、連絡が取れなくなりました。彼には総額で200万円ほど渡しています」

「だまされたと気づいた」と話す一方で、警察に訴えるつもりはないという。「今でも彼の気持ちが嘘だとは思えない」と、あきらめきれない気持ちものぞかせる。

 この女性を人が好すぎると思う方も多いかもしれない。しかし、彼女のような寂しさを抱える女性の心には、詐欺師の「優しさ」がするりと心の隙間に入ってくるのだろう。

真樹哲也
1985年、北関東生まれ。裏社会に入り込んで取材をし、アンダーグラウンド記事を書くことを得意としている。近著『ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団』(彩図社)が好評発売中。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月19日掲載

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