岸田総理が沖縄入りへ なんとか安倍・菅時代との違いを…応援演説の先に待つ試練

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かつては沖縄に尽力していたが…

 下地が正式に選挙戦を始めた場合、1区は保守分裂となる。自民党としてはなんとしても国場への一本化を図りたい。下地はそれを見越して、自らの自民党復党と引き換えに出馬の見送りを模索しているというのだ。これには地元の沖縄県連が強く反発していて、関係者の一人は「下地が復党なんかしたら県連が乗っ取られる」と強い警戒感を示している。

 対する国場は、2012年に小選挙区で当選したものの、2014年と2017年は比例復活。安倍・菅という沖縄に無関心な政権が続いて逆風に悩まされてきた。しかし今回は、自身が属する宏池会の岸田が総理に就任。8年ぶりの総理の沖縄応援を受けて、小選挙区当選に弾みをつけたい考えだ。自民党のベテラン議員は「来年の参院選が終われば、国場の入閣もあるのではないか」と話す。

 自民党はかつて、小渕恵三や橋本龍太郎、野中広務らが沖縄に強い関心を持ち、沖縄のために汗を流した。小渕は沖縄にサミットを誘致し、アメリカ大統領の沖縄訪問を実現。橋本は普天間基地返還をアメリカに約束させた。野中は自らが受けた差別体験をもとに沖縄に深い同情の念を寄せ、議員を辞めてからも幾度となく足を運んでは、沖縄に思いを寄せることの重要性を説いた。何より野中は、自民党有力者に上り詰めてからも沖縄で金集めをしなかったという。しかし、2012年の自民党政権復帰後、トップである安倍の無関心が伝播したのか、沖縄を重視する声が党内で上がることはほとんどなくなり、中央政府と沖縄は乖離を続けてきた。

首相に問われる「説得力」

 沖縄はいま、辺野古の基地建設をめぐって民意が分断され、コロナ禍によって経済的にも大打撃を受けている。その中での岸田政権誕生と総選挙は、これから沖縄にどう向き合っていくのかを決める重要な機会となる。

 この週末に西銘復興大臣とともに東北の被災地3県を視察している岸田が、続いて沖縄を訪れる様子はイメージアップにつながるだろう。特技という「人の話をしっかり聞く」姿も見られるかもしれない。ただし、安倍政権誕生からほぼ9年もの乖離を経た沖縄への対応は、一筋縄ではいかない。辺野古移設を含めて沖縄県民をどう説得し、工事を進めていくのかも岸田には問われている。尖閣諸島を抱える沖縄は、好むと好まざるとにかかわらず、いまや米中対立の最前線となってしまった。安全保障上の重要性と米軍基地があることによる日常の不安や負担をどう両立するのか……岸田にとっては応援演説の先に大きな試練が待っている。

武田一顕(たけだ・かずあき)
元TBS北京特派員。元TBSラジオ政治記者。国内政治の分析に定評があるほか、フェニックステレビでは中国人識者と中国語で論戦。中国の動向にも詳しい。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月17日掲載

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