「おかえりモネ」「青天を衝け」、秋の新作も異色の作品 NHKのドラマが攻めている理由

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「青天を衝け」のヒットの理由

「青天を衝け」もこれまでの大河とは違う。幕末・維新作品でありながら、竜馬も海舟も出てこない。それでいて徳川家康(北大路欣也、78)がストーリーテラーとして登場している。往年の大河ファンが目を剥きそうな構成であるものの、好評を博している。

 ヒットの理由はいくつか考えられるが、その1つは分かりやすさだろう。

 幕末・維新作品は小難しいと言われ続けてきたが、登場人物を絞り込み、おまけに家康にガイド役をやらせることで、極力分かりやすくした。歴史教養ドラマでもある大河の持ち味を保ちつつ、エンターテイメント性を強めた。

 大河の路線変更の背景にあるものは何かというと、若い視聴者の獲得を狙っているのは間違いない。NHKは中高年以上の視聴者には強いのだが、若者との相性は悪かったからだ。

 これが響き、民放が導入したコア視聴率(13歳~59歳)を見てみると、2020年度は全日帯(午前6時~深夜0時)が5位。後ろにいるのはテレビ東京のみ。ゴールデン帯(午後7時~同10時)も同じ。プライム帯(同7時~同11時)もそうだ。

 放送法によって受信料の支払いは義務付けられているとはいえ、見ていない人からは受信料が取りにくい。かといって中高年以上の視聴者に特化した放送局になるわけにもいかない。となると、朝ドラや大河は若者も支持してくれそうな内容に向かう。

「青天を衝け」は身分制度があったころに理不尽な扱いを受けていた渋沢栄一(吉沢亮、27)が、日本の近代化の礎を築く。「親ガチャ」という言葉が流行る時代だけに痛快だ。若者ウケしているというのもうなずける。

 映画では十分に実績があるものの、民放プライム帯での主演経験がなかった吉沢を栄一役に抜擢したのも若い視聴者の獲得が目的の1つだったのだろう。吉沢は期待に応えた。

シム・ウンギョン起用の異色作

 金看板である朝ドラ、大河以外も変化を感じさせる。10月15日スタートのドラマ10「群青領域」(金曜午後10時)。何もかも失った超人気バンドの女性ピアニスト(シム・ウンギョン、27)が、海辺の町で人とふれあううち、再生に向かう物語である。テーマは「誰もが心の中にある『誰にも侵されない領域』を認め合おう」である。

 こう書くだけでお分かりの通り、民放では制作されそうにない。人間の内面を描くので派手さがないからだ。半面、単館上映の映画が好きな若者やNetflixなどの動画ファンは興味を抱くのではないか。

 主人公は母国・韓国で挫折したことから来日し、超人気バンド「Indigo AREA」に加入したキム・ジュニ。恋人はボーカルの陽樹(柿澤勇人、33)で、ファン公認の仲だった。

 だが、陽樹は大物女優と親密になってしまい、さらに世界配信のオンラインフェスで唐突に脱退宣言をしてしまう。しかもジュニはSNSの標的になる。何もかも信じられなくなったジュニが海辺の町へ逃げると、そこには全く違う価値観を持つ人たちが暮らしていた。

 シム・ウンギョンは2019年の映画「新聞記者」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞などを受賞した実力派。木村文乃(33)が主演したテレビ朝日のドラマ「七人の秘書」にも秘書の1人で出演していたのでご存じの方は多いはず。演技力は折り紙付きだ。

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