「財務次官」異例の寄稿 なぜ今だったのか? その狙いは何だったのか?

国内 政治 2021年10月14日掲載

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タイトルは「このままでは国家財政は破綻する」

 財務省の矢野康治次官(58)が月刊誌「文藝春秋」11月号で、与野党の経済対策などの論争について、「バラマキ合戦」と寄稿したことが物議を醸している。事務方トップがこのタイミングで、どんな狙いで寄稿したのか。異例発信の真意に迫る。

「このままでは国家財政は破綻する」と題した矢野次官の寄稿内容はざっと以下の通りだ。

《最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思う。数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、そして財政収支黒字化の凍結が訴えられ、消費税率の引き下げまで提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのように語られている》

《国の長期債務と地方の債務を併せると1166兆円に上る。GDPの2.2倍であり、先進国ではずば抜けて大きな借金を抱えている。今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものだ。(岸田首相が訴える現金給付策は)結局は死蔵されるだけだ》

 自民党の閣僚経験者に反応を聞いてみると、

「総裁選が終わってノーサイド、これから一致団結して解散総選挙に臨もうという与党にとって、その政策を全面否定する矢が後ろから飛んできた格好ですね」

秘書官を務めた菅前首相が評価して次官に

 矢を飛ばされた形の岸田氏はテレビ番組で、「議論として、色んな考え方、意見は当然あっていい。いったん方向が決まったら、しっかりと協力してもらわなければならない」と語るにとどめたが、リフレ論者である自民党の高市早苗政調会長は「大変失礼な言い方だ。基礎的な財政収支にこだわって本当に困っている方を助けない。未来を担う子供たちに投資しない。これほどばかげた話はない」と批判している。

 更迭論を書き立てるメディアもあったが、

「一応、麻生前財務相に仁義を切り許可を得て出したものであり、物議を醸したからクビとなると政権がハシゴを外した風になってしまう。それはないでしょう。寄稿先の編集長が就任するに当たって“事件を起こす”みたいなこと言っていて、実際にその通りになったから、雑誌側としては、してやったりじゃないですか。色んな人のスキャンダルを随分やってクビを取ってきたわけですが、こういう形でクビとなるとブラックジョークだよね」(先の閣僚経験者)
 
 矢野氏は1985年に一橋大経済学部を卒業して大蔵省に入った。主税、主計の両局長を務めた後、今年7月に一橋大出身者として初めて財務次官に就任。2012~15年には、当時官房長官だった菅義偉前首相の秘書官も務め、「忖度することなく政治家に直言できる、珍しく芯のある官僚だ」と菅氏が評価し、鶴の一声で次官への道が拓かれた。

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