斎藤佑樹引退 ハンカチ王子ファンにおくる早稲田実業時代の忘れがたき3試合

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 10月1日、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手が、今シーズン限りでの現役引退を表明した。プロでは通算15勝26敗(2020年度終了時)と思うような活躍が出来なかった。

 一方、学生時代に“ハンカチ王子”フィーバーを巻き起こし、一躍時代の寵児となったのはご存じのとおり。とくに早実(西東京)のエースとして出場した2006年の夏の甲子園の活躍は印象深い。なかでも再試合を含む2試合計24回を投げきった決勝戦、駒大苫小牧(南北海道・以下、駒苫と略)との激闘は、今もなお、高校野球史に燦然と輝いている。

 だが、高校時代の斎藤の名勝負はこれだけではない。今も忘れ難き3つの試合を紹介しよう。

「1-0ですね」

 まずは斎藤が高2だった2005年秋の明治神宮大会だ。同年秋の東京大会王者として乗り込んだ秋の日本一決定戦で、早実は準決勝に進出。そこで激突したのが田中将大(東北楽天)と主砲の本間篤史擁する北海道大会の覇者・駒苫だった。あの夏の甲子園決勝の約9カ月前に、両校はすでに顔を合わせていたのである。

 試合は早実が初回に2点を先制し、4回表にも1点を追加。3-0と序盤から試合を優位に進めていた。ところが6回裏の駒苫の攻撃から試合の流れが一変してしまう。斎藤が本間にソロ本塁打を、さらに8番の田中にも適時打を喫し、1点差に迫られてしまったのだ。続く7回裏にも2死から3番の中澤竜也以下に4連打を許し、3失点。ついに逆転されてしまった。

 頼みの打線も4回途中からリリーフ登板した田中の前にわずか2安打で13三振を喫し、手も足も出なかった。先発した斎藤は5回まで無失点に抑え、4番・本間からの2つを含む10奪三振の力投を見せたものの、終盤に力尽きる形となってしまったのである。

 痛恨の逆転負けを喫した帰り道の車中で、監督の和泉実は斎藤に「翌年の春の選抜で苫小牧と当たったら、どうやって勝つ?」と聞いたという。斎藤は「1-0ですね」と即答。これに和泉も「僕もそう思う。1-0でしか勝てないと思うよ」と返している。田中の“伝家の宝刀”スライダーを打ち崩すのはかなり難しいと思われたからだ。

 駒苫の出場辞退で春の選抜での対戦は実現しなかった。が、ほぼこの言葉通り、翌年夏の甲子園決勝では1-1の延長15回引き分け再試合を演じ、再試合でも斎藤は8回まで1失点で抑えていた。斎藤の“勝負勘”を証明するエピソードだ。

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