中田翔はなぜ内角球を打てなくなったのか 巨人OBは「スランプではありません」

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“治療”できるのは自分

「鏡に向かって素振りをします。ちゃんと腕は折りたたまれ、内角球を打てるバットコントロールができているのです。試合前のフリーバッティングも同じです。内角球を投げられてもホームラン性の当たりが出ます。ところが試合に出場すると、全く打てないのです。同じバットコントロールをしているはずなのに、内角球を投げられると根本に当たって凡打になってしまう。今の中田くんは、まさにこの状態だと思います」(同・広澤氏)

 対策は1つしかない。素人には分からないくらいのマイナーチェンジを行うのだ。しかしながら、自分で自分を治すのは大仕事だという。本来なら打撃コーチの助けが必要だからだ。

「特に中田くんは、日ハムと巨人という、批判的に言えば放任主義、肯定的に言えば『結果を出してくれたら後は何も言いません』というチームにしか所属していません。もし彼が、今シーズンは日ハムで謹慎を命じられたままシーズンを終えて、来季にもっと細かなケアを行ってくれる球団に移籍していたとしたら、打撃成績が上昇した可能性は否定できません」(同・広澤氏)

コーチは無力?

 俗に「運も実力のうち」という。中田が巨人に入団したのも、彼の運命・宿命と言える。そもそもプロ野球選手は、運に翻弄されることが少なくない。誰が監督かという自分ではどうしようもない巡り合わせで、野球人生が変わってしまうこともある。

 その一方、メジャーリーグも含めプロ野球の世界では、コーチの役割はそれほど大きくない。コーチの力量が非常に重んじられている、ゴルフやテニス、水泳といったスポーツとは対照的だ。

「水泳の平井伯昌コーチ(58)は、多くのメダリストを育てました。しかし、ご自身はメダリストではありません。ゴルフもテニスも『プレーが上手い選手』と『教えるのが上手いコーチ』は別の才能だと認識されています。一方、プロ野球のコーチは、結局、現役時代の成績が評価されて指導を行っています。12球団で選手の面倒見に差があるのは事実ですが、各球団における打撃コーチの顔ぶれを見てみると、誰もが現役時は『自分1人の力で不調を克服してきた』コーチばかりです」(同・広澤氏)

 メジャーリーグは、更に厳しい。何しろ全世界から才能のある選手が集まってくる。首脳陣の関心は「いかにして公正にふるいにかけるか」であり、手取り足取り選手を教えることではない。

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