中田翔はなぜ内角球を打てなくなったのか 巨人OBは「スランプではありません」

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「スランプ」ではなく「不調」

 西本氏ならずとも「こんな状態で大丈夫か」と疑問視するのは当然だ。中田は1989年4月22日に生まれ。32歳という年齢が重くのしかかっているのではないかと不安なファンもいるかもしれない。

 だが、巨人OBで野球評論家の広澤克実氏は、「車に喩えると、中田くんのエンジンはいまだにピカピカです。最高峰の馬力を誇っているのは間違いありません」と“老化”を否定する。

「エンジンに問題があるわけではありません。バッテリーが上がっているとか、タイヤがパンクしているとか、あくまでも修理に成功すれば、充分に復活できるのです。しかし、修理に失敗すると不振が更に長引く可能性があり、全く油断のできない状態だとは思います」

 ちなみに今の中田は「スランプ」ではないという。

「スランプの場合は、精神的な原因が主です。仲の良い人と呑みに行ったり、野球のことを忘れて趣味に没頭したりと、精神的にリフレッシュすることがスランプ解消の近道です。ひょっとすると中田くんは、今の状態をスランプと考え、何とかして気持ちを切り替えようと懸命なのかもしれません」(同・広澤氏)

不調の原因は「ズレ」

 中田がスランプではない証拠は、まさに西本氏が指摘した「内角球を苦手にしている」ところがポイントだという。もっと抜本的な問題だと見る。

「中田くんのファンなら、先日の阪神戦を見ながら、『調子の良い時なら、あの内角球だって打っていたはずなのに』と思ったかもしれません。それは正しい指摘です。絶好調の中田くんなら、阪神の高橋遥人投手(25)の内角球でも、上手に腕を畳んでヒットかホームランにしていたはずです」(同・広澤氏)

 今までできていたことが、急にできなくなる。プロ野球のバッターは、この“症状”に悩まされることが頻繁にあるという。

「練習が嫌いなプロ野球選手はいません。打者なら延々と素振りを続けても、全く苦になりません。しかし、選手は人間であり、ロボットではないのです。理想的なスイングを体に覚えさせているつもりでも、必ずズレが生じます。最初はズレの幅が小さいので、普通に打てます。ところが、ズレが次第に蓄積していき、ある日突然、打てていたはずのボールが打てなくなってしまうのです」(同・広澤氏)

 プロ野球のバッターは「好調→不振→克服→好調→不振→克服」を繰り返し、そして最後に引退するのが一般的な“野球人生”だという。

 そして選手にとっては恐ろしいことに、この“不振”は練習を繰り返すだけでは治らない。

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