ウルトラナショナリズム台頭で中国の台湾侵攻が現実味 在日米軍や自衛隊施設が攻撃される危険も

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中国の普通のビジネスパーソンまでが

 衆議院選挙を間近に控え、新型コロナウイルスのパンデミック後、初の本格的な自民党総裁選挙が盛り上がりを見せている。コロナ対策が主要テーマになっているのは当然かもしれないが、評論家で合気道凱風館を主催している内田樹氏は、「総裁選より注視すべきは米中両国で喫緊のトピックである台湾侵攻だ」と警告を発している(9月15日付AERA)。上海で仕事をしている台湾出身の門人が一時帰国した際に、台湾出身である彼に向かって同僚の中国人たちが、悪びれることなく「もうすぐ台湾侵攻だ」と放言している、という話を聞いて衝撃を受けたからだ。

 中国政府が「台湾への軍事侵攻を辞さず」と公言し、共産党系メデイアがこれに追随する記事を書きまくるという状況が続いており、共産党員でもない中国の普通のビジネスパーソンまでが、「台湾侵攻は間近だ」と信じているというのだ。米国のアフガニスタンからのぶざまな撤退ぶりを見て、多くの中国人が「現在の米国なら台湾を見捨てるだろう。千載一遇の好機が訪れた」と、考えている可能性もある。

 中国では今、ナショナリズムが猛烈な勢いで台頭している。

支持を取り付けるためナショナリズムを利用

 意外と思われるかもしれないが、中国はもともとナショナリズムが強い国ではなかった。

 ソ連崩壊により「共産主義」という統治の根拠を失った中国政府が、国民の支持を取り付けるためにナショナリズムを利用したのがその始まりだ。

 中国では1996年、『ノーと言える中国』という本が出版された。米国の価値観に憧れる中国人を軽蔑し、「中国がいずれ超大国になる」と予測する内容であり、1990年代の中国のナショナリズムの台頭を示す一冊と言われた。

 中国の近代史は、「アヘン戦争以来一世紀にわたって外国の帝国主義勢力に蹂躙された」という「百年国恥」が刻まれている。植民地化されたという苦い経験が深く刷り込まれていることから、中国は欧米社会が確立した国際秩序に不信感を抱き続けてきた。

 中国のナショナリズムはこれまで防御的な色彩が強かったが、リーマンショック後に中国が世界経済を牽引するようになると、その性格が攻撃的なものに変わった。2012年に習近平政権が誕生し、「中国の夢」を語るようになってから状況はさらにエスカレートした。

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