事件現場清掃人は見た マンションの同じ部屋で「70代男性」が“連続孤独死”の怪

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、マンションの同じ部屋で孤独死した2人の70代男性について聞いた。

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 高江洲氏は以前、孤独死する人が出る部屋の共通点として“湿気が多いこと”を挙げた。しかし今回紹介するのは、日当たりや通気性も良い部屋で、立て続けに2人が孤独死した非常に稀なケースである。

「都内の不動産会社から依頼がありました。6畳のワンルームマンションの1階で70代後半の男性が孤独死し、1カ月経って発見されたそうです」

 いつものように、すぐに現場に向かった。

「玄関を開けると、まだ死臭が漂っていました。死後1カ月経っていたわけですから、強烈な臭いでした。ところが、事件現場につきもののカビ臭さは一切なかったのは意外でした。部屋は通気性も日当たりも良かったのです」

生活保護を受けていた

 亡くなった男性は、生活保護を受けていたという。

 東京都では、単身者で床面積15平米超の物件の場合、生活保護の住宅扶助(家賃補助)は5万3700円が上限となっている。

「不動産会社によると、家賃は生活保護の家賃補助の上限を下回る、5万円を切る金額でした」

 男性は、入居してから3カ月後に亡くなったという。

「部屋はきれいに整頓されていました。キッチンを見ると、鍋や調理器具、食器類がきれいに並べてありました。ビールや焼酎の空き缶はなく、不摂生な生活を送っていた形跡はありませんでした。ただ、足が不自由だったようで、手押し車と杖がありました。1階に入居したのも頷けます」

 男性には持病があったという。

「蒲団の上で亡くなっていたそうです。脂の腐ったような独特な死臭がするので、内蔵疾患だった可能性があります」

 高江洲氏は、早速仕事に取り掛かった。床板をはがすと、体液の汚れが床下まで達していたため、リフォームする必要があった。

「部屋を消毒して清掃した後、床をすべて張り替えました。リフォームを終えて部屋がきれいになると、すぐに借り手が見つかったそうです。事故物件でも、家賃が安いので借り手がついたのだと思いました」

 ところが、それから4カ月後、高江洲氏のもとに思わぬ依頼が飛び込んでくる。

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