パラリンピックの課題は「クラス分け」 同クラスでも障害の程度に差が

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 東京パラリンピック競泳背泳ぎに出場した山田美幸(15)は、両腕がない上に両脚の長さが違う。

 レースでは、両脚で水を蹴る選手や、両腕で水を掻く選手を相手に、彼女はほぼ左脚だけで水面を進んでいたように見えた。

 結果、二つの銀メダルを獲得したから良かったものの、見た目では最も重い障害を抱えていただけに、不公平な印象を受けた方も多かったのではないだろうか。

「障害のクラス分けは見た目で決めるわけではありませんからね」

 とパラ水泳関係者が語る。

「さまざまな筋肉の強さや関節の可動域を測定し、どの程度の機能が失われているかの比率を計算した上で、全ての数値を合算して決めるのです。水泳の場合は水中でもテストをします」

 簡単に説明すると、四肢に欠損がなくても例えば麻痺などで各1点のスコアに止まるなら計4点。一方、両腕がなく、片脚も1点しか取れないとしても、もう一方の脚が5点取れば計6点。後者の方が障害は軽いと判定されるのだ。ちなみに以前の山田は、今より障害の軽いクラスとされていた。

「不正防止のため、使えないはずの筋肉を使っていないか、回らないはずの関節が回っていないかなど、競技中も選手はモニターされています。過去には、不正が見つかり記録が取り消されたこともあります」(同)

 というから、想像以上に厳密で厳格にクラス分けがなされているようである。

 もっとも、

「同クラス内で、ボーダーラインと最重度の選手とでは相当の差が生じる。これはどうしようもない」(同)

 ならば、クラスを増やし細分化すればいいのでは?

「いや、今はクラスが多過ぎるので減らす傾向にあります。メダルが減れば、それだけ重みが増しますから。ただ、クラスを減らすとクラス内の障害の差が広がり、不公平感が増す。兼ね合いが難しいんです」(同)

 基準は世界選手権が催される2年ごとに見直される。成長期にある山田個人のクラスもまた、いずれ改めてテストが行われ、再検討されることになるという。

「観客以上に、選手たちも現行の“クラス分け”には問題意識を持っています」

 と大手紙記者が続ける。

「今大会、競泳で五つのメダルを獲得した鈴木孝幸(34)は現在、イギリスの大学院で“クラス分け”についての研究をしています」

 鈴木は今般、国際パラリンピック委員会の選手委員選挙に立候補して見事当選。こちらでの活躍にも期待だ。

週刊新潮 2021年9月16日号掲載

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