元社長連れ去りもあった「コクヨvs.ぺんてる」仁義なき戦い 裏交渉を暴露した文書で抗争激化

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差出人不明の文書

 文具業界最大手の「コクヨ」と「プラス」による、「ぺんてる」株の争奪戦の裏側は実に込み入っている。そもそも、コクヨが投資ファンドからぺんてる株を手に入れたのは2019年5月のこと。ぺんてるの創業家が手放した37.45%の株を間接保有する形で筆頭株主になったのだが、それから半年余り、プラスも巻き込み泥沼の争いとなった。

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 コクヨの黒田英邦社長はぺんてるの和田優社長に対して、強引な買収ではなく、まずは緩やかな提携を持ち掛けた。ところが、10月半ば、プラスも争いに加わることになる。コクヨ経営陣あてに、差出人不明の文書が送り付けられてきたのだ。

 コクヨ関係者によると、文書はぺんてるの財務コンサルタント「ASPASIO」の名前が入った用箋で、〈K社が株式を放出(売却)する場合の対応〉と書かれていた。K社とはコクヨのことらしい。ほかにも、PE社、PL社という表記が登場する。むろん、PEはぺんてる、PLがプラスだ。

エスカレートする争奪戦

 文書は、大株主のコクヨがぺんてるの経営に関与できないようにするという内容で、コクヨがぺんてる株を手放すことになったらプラスが受け皿になることも記されていたという。プラスが4割前後のぺんてる株の取得に乗り出す、ともあった。

 10月末、2通目の文書が届く。プラスによるぺんてる株の買い付けの日程や、ぺんてる株主に対する説得工作、マスコミ対策などについて役員の分担とスケジュールが細かく載っているものだ。

 11月11日、コクヨの黒田社長はぺんてるの和田社長と面会し、文書について問いただした。だが和田社長は言葉を濁すばかり。裏切りを確信したコクヨは、4日後、ぺんてるの株式買付を発表する。1株3500円で、50%以上の株を買い増すとの内容だった。

 以降、争奪戦がエスカレートするあまり、ぺんてる幹部によって、コクヨ側になびきそうになったぺんてるの水谷壽夫元社長が自宅から連れ出されるという珍事件も起きている。

週刊新潮」2019年12月19日号「MONEY」欄の有料版では、ぺんてるの株式をめぐる争奪戦を詳報する。

週刊新潮 2019年12月19日号掲載

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