「お客様ご案内中アナウンス」が障害者への痴漢の温床に 鉄道事業者も徐々に対応を変更

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〈〇〇号車ご乗車。降車駅●●お客様ご案内中です〉

 電車やホームで流されるアナウンスは車椅子や視覚障害者の乗降を駅員がサポートするための放送である。ところが、このアナウンスが痴漢やストーカー被害の温床になっているという。国土交通省の鉄道サービス室が鉄道事業者に車椅子使用者などの乗降情報の伝達方法を再考するよう連絡したのは8月18日のこと。全国の障害者団体が加盟するNPO「DPI日本会議」の要望を受けてのものだ。

「私自身も車椅子ですが、長い間、実態をよく理解していませんでした」

 とは、DPI日本会議の佐藤聡事務局長だ。

「車内で痴漢やストーカー行為があることは以前から女性メンバーに聞かされてはいました。そこで今年6月、改めて女性スタッフが知り合いの19人の女性障害者に聞き取りをしたところ、続々と被害の声が出てきたのです」

 正確な統計があるわけではないが、事例を挙げるとアナウンスを聞きつけた男が飛び乗ってきて「いた! 手伝ってあげようと思って走ってきたよ! 〇〇駅でしょ」と言いながら、降車駅までずっと足をさすってきたり、「ここだ!」と乗り込んできた男が下着の色を聞いたり卑猥な言葉を投げかけてきたりしたという。いずれも相手の障害を知っての卑劣極まりない行為である。

 ところが、彼女たちが個々に「アナウンスを止めてほしい」と頼んでも駅員は取り合ってくれない。DPI日本会議が国交省にかけあって、ようやく全国の鉄道事業者に訴えが届いた。

「大阪や名古屋の私鉄では、無線や手の合図で対応しているところもあります。しかし、関東はまだ。ぜひ導入してほしい」(同)

 やっと光が当たった、知られざる犯罪被害。

週刊新潮 2021年9月9日号掲載

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