【W杯予選】中国戦でも疑問を感じた森保監督の選手起用 10月の予選で呼ぶべき選手は?

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ドリブラーを起用しない謎

 裏を返せば、当初のゲームプランはハマらなかった。そこで伊東が機転を利かせたことになるが、「そんなことはサッカー選手なら当たり前だろ」とも思ってしまう。このコメントは、決して美談にしてはならない。

 そもそも足元から足元にパスをつないで相手DF陣を崩せるチームは、最近では東京五輪のスペインくらいだろう。ドリブルで勝負して相手を剥がすから、数的優位な状況は生まれる。実際、久保建英は右サイドでリターンパスを受けるとドリブルで持ち込み、決定的なシュートを2本放っている。

 引いて守りを固める相手にはPKの獲得を含めてドリブラーが有効だとオマーン戦の原稿でも書いたが、なぜ森保監督は中国が守備を固めてくることを予想しながらドリブラーを起用しないのか不思議でならない。コンディション次第ではあるが、10月の予選では三笘薫を招集して欲しい。

 日本に勝点3をもたらす決勝点を決めたのはエースの大迫だった。伊東のクロスを足の裏で押し込むアクロバチックなシュートだった。前半38分、伊東のヨコパスから左ポストを叩いたシュートの方がはるかに簡単だと思うが、ここらあたりがストライカーの習性かもしれない。

森保監督への“検証”が必要

 そんな大迫だが、オマーン戦に続きポストプレーやタテへの抜け出しは相手の足に引っかかり、中途半端なプレーに終わることが多かった。まだコンディションがベストではないのか。こちらは神戸でのプレーで見極めるしかないだろう。追加招集したオナイウ阿道のプレーも見たかったが、負傷(古橋と長友)と累積警告(伊東)により3回の交代枠を使ったため起用するチャンスがなかったのは残念だった。

 日本は10月7日にアウェーでサウジアラビアと、12日に埼玉スタジアムでオーストラリアと対戦する。グループBの上位対決だけに、「前半戦のカギになる。しっかり叩いて勝点6を取らないといけない」とキャプテンの吉田麻也が力説するのも当然だ。

 そこで気になるのは、やはり2試合で1ゴールに終わった攻撃陣である。18年ロシアW杯以来、不動のエースである大迫の好不調に左右されるようでは先行き不安だし、固定メンバーによるスタメンの高齢化も気になるところだ。

 東京五輪代表という2つのカテゴリーのチームを率いた森保監督には、最終予選という“修羅場”を通じてチームの若返りを期待したい。アジアの最終予選で結果を出すだけで汲々としているようでは、カタールの本大会でベスト8に進出するのは夢物語と思うからだ。

 そして前回のロシアW杯では直前でヴァイッド・ハリルホジッチ監督との契約を打ち切ったように、日本サッカー協会は森保監督でW杯を戦えるのかどうか、最終予選の1試合1試合でしっかり検証して欲しい。

 中国戦は辛勝したものの、10月の2試合で結果が出なければ監督の交代もやむを得ないだろう。そのための準備を今から進めているのかどうか。むしろ、こちらの方が気になる。

 急場しのぎに反町康治技術委員長が代表監督にスライドすることだけは止めて欲しい。できれば選手同様、ヨーロッパの最先端のトレンドを把握している外国人監督が個人的には理想だ。もちろんW杯予選が再開され、各国リーグも新シーズンに入ったばかりなので有望な適任者がいるのかどうか不明だが、日本サッカー協会には準備だけはしっかりと進めて欲しいものだ。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月10日掲載

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