【W杯予選】徹底研究したオマーンに無為無策の日本が完敗 森保監督の指揮にこれだけの疑問
「負けるべくして負けた」
「無為無策」――日本の試合を見ていて後半途中から頭に浮かんだのは、この四文字熟語だった。W杯アジア最終予選、日本はオマーンに0-1で敗れた。
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「無為」とは「何もしないで手をこまねいている」こと、そして「無策」とは「起こった事態に対して効果的な対策や方法がとれない」ことと三省堂『新明解四字熟語辞典』にある。
ホームでの屈辱的な敗因として、日本の主力は海外組のため、時差調整やコンディション維持が難しい。それに対しオマーンは、ブランコ・イバンコビッチ監督の母国セルビアで1ヶ月近くキャンプを行い、入念な準備が行われたことを指摘するメディアもあった。
しかし、日本の主力が“海外組”なのは今に始まったことではない。そして今回はコロナの影響で、オマーンだけでなく中国やベトナムもリーグ戦がないため長期合宿をしていると聞く。過去にもサウジアラビアなど中東勢は、国内リーグより代表を優先して強化合宿を行い、W杯予選の日本戦に臨んできた。
そしてこれまでの日本は、そうしたハンデがあったとしても、結果を残してきた。にもかかわらず、今回オマーンに「あり得ない敗戦」(長友佑都)を喫したのは、次の2つの理由からだ。
森保一監督が送り出したスタメンは、負傷の冨安健洋と南野拓実をのぞけば、ほぼ不動のベストメンバーだった。これはこれで、悪いことではない。あえて奇をてらう必要はないと思うからだ。
工夫ゼロの日本
問題は、オマーンのイバンコビッチ監督が“日本対策”を十分に練ってきたのに対し、森保監督にもピッチで戦う選手にも、工夫がまったく見られなかったことである。
絶対的な1トップの大迫勇也に対し、CBアルハミシがマンマークで着きつつ、CBのアルハブシとボランチのアルサーディがプレスバックする形で囲い込み自由を奪った。トップ下の鎌田大地に対しても、ボランチのアルアグバリとファワズがスペースを消すことで日本のホットラインを遮断。
さらに伊東純也は、得意のスピードが左SBアルブサイディにまったく通じない。前半のオマーンは攻め込んだ後に日本から見て左サイドにスペースがあったため、原口元気と伊東でポジションをチェンジしても面白いと思ったが、そうしたアイデアは選手もベンチも思い浮かばなかったようだ。
後半に入り森保監督は原口に代えて古橋亨梧を投入した。原口は、攻撃はもちろん、守備でも強度の高いプレーができる。5年前のロシアW杯アジア最終予選の初戦で日本はUAEに1-2と逆転負けを喫した。勝利の立役者となったのが、中東史上最高の司令塔と言われたオマル・アブドゥルラフマンだった。しかしリベンジとなったアウェーの試合では、左MF原口がSB今野泰幸とのコンビでオマルを完封した。
オマーンのレベルアップ
裏に抜けるプレーを得意とする古橋を投入するなら、孤立している大迫か、同じタイプの伊東ではないか。負けているならともかく0-0なら、守備面を考えれば原口はピッチに残しておいた方がいいのではないか。まして原口は19年アジアカップのオマーン戦で後半にPKを獲得し、自ら決勝点を決めている。そして伊東と交代させるなら、古橋はセンターでのプレーを得意とするだけに、大迫との2トップによる4-4-2にする手もあった。
しかし森保監督は、古橋を原口と同ポジションに起用する、最小限の変更にとどめた。ところが、オマーンの右SBアルハルティも、古橋に負けず劣らず俊足の持ち主だった。後半2分、アルハルティのドリブルによる攻め上がりを古橋は必死で追ったが、ボールを持っていないにもかかわらず古橋は自陣近くになって追いつくのがやっとだった。
アウェーでのリターンマッチでは、この俊足の両サイドバックをどう封じるかもカギになるはずだ。
このように、日本のストロングポイントは研究され、対策を施されてきた。にもかかわらず、日本はオマーンに対し、あまりにも「無為無策」だった。
そして日本が「負けるべくして負けた」(吉田麻也)もう1つの理由は、オマーンが間違いなくレベルアップしているからに他ならない。
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