コロナ禍の甲子園で見つけた“ダイヤの原石”8人 ドラフトの目玉になるか

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 コロナ禍の異例の開催となった夏の甲子園が大詰めをむかえている。ドラフト候補という側面からみると、有力選手が地方大会で敗退した影響もあり、甲子園出場組のなかでは、上位指名が確実といえる選手は最速157キロ右腕の風間球打(明桜)のみ。これがスカウト陣の総評と言えそうだ。

武器はコントロールの良さ

 ただ、甲子園に出場した時点で候補に入らなくとも、大学や社会人で一気に成長して、上位指名を受けて、プロ入りするというケースも多い。そこで今回は、今年の夏の甲子園に出場した選手のなかで、数年後のドラフトで“目玉”となりうる有望株を取り上げたい。

 過去、高校卒業後に“ドラフトの目玉”に成長した選手を振り返ると、左投手が多い傾向がある。例えば、高橋尚成(元巨人など)をはじめ、石川雅規(ヤクルト)や和田毅(ソフトバンク)、早川隆久(楽天)がそれに当たる。彼らの共通点は、高校時代から制球力と試合を作る能力が兼ね備えたうえで、大学や社会人で球速のアップに成功している。

 彼らと似たようなタイプのサウスポーは、今年の夏の甲子園でも少なくなかった。筆頭となる選手は、當山渚(沖縄尚学)。沖縄大会の4試合に登板。21回1/3を投げて無失点という抜群の安定感で、チームを優勝に導いている。

 夏の甲子園では、初戦の阿南光戦で完封勝利を飾った。その内容は被安打2、12奪三振という圧巻のピッチングだった。ちなみに、許したランナーは併殺と盗塁失敗でそれぞれアウトとなり、対戦した打者は1試合では最も少ない27人で試合を終わらせている。この記録は82年ぶりの快挙だ。

 當山の武器は、何といってもコントロールの良さである。地方大会と夏の甲子園の計6試合、投球回数38回で許した四死球はわずかに4つだけ。夏の甲子園で計測した最速140キロでそれほど速くはないが、力みのないフォームで球持ちも長く、数字以上に速く感じられた。171cm、70kgと小柄ではあるものの、フォームに悪い癖がないことを考えると、筋力がつけば、さらに球速がアップしそうな雰囲気がある。現時点で、進路を明言していないが、次のステージで実績を積めば、実戦派のサウスポーとして、ドラフト戦線に浮上する可能性は高くなる。

ピッチングの安定感は上位のレベル

 このほか、野崎慎裕(県岐阜商)や西村王雅(智弁学園)、ヴァデルナ・フェルガス(日本航空)も面白い存在だ。夏の甲子園での最速(3回戦終了時点)は、西村が139キロ、野崎が140キロ、ヴァデルナが137キロと、いずれもドラフト候補と呼ぶには物足りないとはいえ、ピッチングの安定感は上位のレベルにある。

 きれいに高い位置から腕が振れる野崎は、身長172cmとは思えないボールの角度が持ち味だ。春夏連続で甲子園の初戦でチームは敗れたが、野崎はいずれもしっかり試合を作っていた。

 西村は、少し肘を下げたスリークォーターでサウスポーらしい球筋が魅力だ。強気に内角高めを攻め、緩いボールの使い方が上手い。ピンチでの強さもあり、今後、スピードが出てくれば、リリーフとしての起用も期待できそうだ。

 ヴァデルナは、188cmの長身左腕。大型サウスポーにありがちな、投球や動きに粗さがないのが特長だ。ストレートの球速は130キロ台中盤程度で、微妙にフォームに変化をつけて緩急を上手く操る。体格的なポテンシャルがあるだけに、一気にスピードアップすることも期待できそうだ。3回戦の智弁学園で敗れた後、今後は大学に進学してプロを目指すと話している。

 一方、ここまで取り上げた選手とは、タイプが異なる選手にも楽しみな存在がある。金井慎之介(横浜)は、高い将来性を誇るサウスポーとして注目されている。中学時代から大型左腕として評判だった金井は、1年夏からベンチ入りを果たすなど、周囲の期待が大きかったが、故障などの影響で、外野手して起用が多くなってしまった。夏の甲子園では、智弁学園戦で1イニングを投げたのみだった。それにもかかわらず、担当スカウトからは「2年春の好調時のピッチングが忘れられない」という声が聞こえてきた。確かに、金井の伸びやかなフォームには、高い将来性を感じられる。次のステージでの活躍が楽しみだ。

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