夏の甲子園、ベスト4は全て近畿勢 ここまで来たら負けられないそれぞれの事情とは?

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 長雨による順延に次ぐ順延で、異例の日程となった今年の夏の甲子園。いよいよ大詰めを迎えた大会は、史上初となる近畿勢がベスト4を占める初の展開となった。準決勝を戦う4チームが抱える“負けられない事情”を紹介しよう。

 まずは、第1試合で戦う近江(滋賀)と智弁和歌山だ。近江は、近畿2府6県の中で唯一、春夏通じた甲子園での優勝がない(ときに関西地方に含まれることもある三重も春夏各1回ずつの優勝がある)。春夏通じて1度も優勝していない都道府県は東北の6県を筆頭に全部で14県あるが、今回はそこから抜け出せるチャンスなのだ。

 これまでの春夏の最高成績は01年夏の甲子園。竹内和也(元・西武)に島脇信也(元・オリックス)、そして清水信之介の“三本の矢”の継投を武器に近江が決勝まで勝ち上がった。だが、最後は強豪・日大三(西東京)の前に2-5で惜しくも準Vに終わっている。近江としてはこのとき以来、20年越しのリベンジのチャンスなのである。

 一方の智弁和歌山は06年以来、15年ぶりのベスト4進出である。同校は、93年夏に甲子園初勝利を挙げて以降、94年春優勝、96年春準優勝、97年夏優勝、99年夏ベスト4、00年春準優勝、同年夏優勝、02年夏準優勝、前述の06年夏ベスト4、18年春の準優勝という結果を残していた。

 だが、21世紀に入ってからは春夏1度も優勝がなく、夏のベスト8入りにしても08年以来、13年ぶりの出来事なのである。その間、夏は3度のベスト16が最高で、2回戦敗退が1度、初戦敗退に至っては4度を数える。今年は待望のベスト4進出だった。これまでの智弁和歌山の決勝戦の成績は18年春の準優勝を含めて3勝4敗と負け越しており、02年夏と合わせると2連敗中。3連敗は避けたいところだろう。

 ちなみにこれまでの滋賀勢と和歌山勢の夏の対戦成績は2勝1敗で、和歌山勢がわずかに1つ勝ち越している。だが、1敗の対戦カードは近江対智弁和歌山という顔合わせだった。それは18年の第100回大会の1回戦で、下馬評はこの年の春の選抜準Vチームだった智弁和歌山の圧倒的有利とされていたが、蓋を開けてみれば3-7の完敗。初戦敗退を喫した智弁和歌山は、この大会後に約38年に渡ってチームを率いた高嶋仁監督が勇退した。智弁和歌山としてはまさに“因縁”の相手となるだけに、絶対に負けられないところだ。

智弁学園と京都国際

 第2試合は、智弁学園(奈良)と京都国際である。まず智弁学園についてだが、勝てば夏の甲子園では初めての決勝戦進出となる。実は奈良勢は春夏の甲子園で過去4回決勝戦に進出しているのだが、1986年夏の天理3-2松山商(愛媛)、90年夏の天理1-0沖縄水産、97年春の天理4-1中京大中京(愛知)、そして16年春の智弁学園2-1高松商(香川)と、無敗なのである。それどころか、決勝戦に4度以上進出して負けなしという都道府県は奈良だけ(逆に春夏通算で4回以上決勝戦に進出して全敗しているのが4戦4敗の青森と宮城)。これに次ぐ無敗の県が2戦2勝の佐賀(94年夏の佐賀商と07年夏の佐賀北)だから、その差は明白だ。今回、智弁学園が優勝すれば、奈良の決勝戦不敗神話が「5」に伸びることになる。同時に独走状態に入ることを意味するわけだ。

 京都国際は京都勢では05年の京都外大西以来、16年ぶり18度目の4強入り。しかも初出場でのベスト4進出となった。京都勢の初出場校が4強入りするのは、1915年の第1回大会で優勝した京都二中(現・鳥羽)を除けば、初の快挙である。初出場で優勝となれば、夏の甲子園では13年の前橋育英(群馬)以来、8年ぶり15校目というこれまた快挙だ。しかし、もし決勝戦に進出しても準優勝なら、京都勢の「シルバーメダルコレクター」記録を更新してしまう。夏の甲子園では史上最多の9回の準優勝記録をもつ京都勢、これに次ぐのが6回で並ぶ静岡と山口だから、その数は突出している。仮に今回、決勝で負ければ大台の二桁に突入してしまうのである。

 ちなみに過去9回の内訳は龍谷大平安が広陵(広島)と並ぶ史上最多タイの4回、その他に京都一商(現・西京)、京都二中、京都商(現・京都学園)、京都成章、京都外大西が各1回となっている。対して優勝は京都二中が1回、龍谷大平安が3回の計4回。準優勝の回数の半分以下なのだ。直近の優勝である56年第38回大会では、平安(現・龍谷大平安)が岐阜商(現・県岐阜商)を3-2で降し同校史上3度目の夏の甲子園制覇を果たしている。つまり60年以上も深紅の大優勝旗から遠ざかっているわけだ。その後、夏は決勝戦で4連敗を喫している。京都勢としては今回、二桁10回の準優勝と決勝戦での5連敗をダブルで阻止し、65年ぶり5度目の優勝を果たすチャンスなのである。

 さて、ここで夏の甲子園における奈良対京都の対戦成績を調べてみると、これまで2回対戦していて2回とも京都勢が勝利している(33年第19回大会準々決勝の平安中《現・龍谷大平安》9-1郡山中《現・郡山》と93年第75回大会2回戦の京都西《現・京都外大西》4-2郡山)。データ上では京都国際が有利となっているが、はたして……。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年8月27日掲載

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