尾身茂会長にコロナ医療体制の強化は荷が重過ぎる 政府が参考にすべき英国の取り組み

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「日本各地に野戦病院を設置すべき」

 田村厚生労働大臣は22日、

「新型コロナウイルス感染者用の病床確保の補助金(1床当たり最大1950万円)を受け取りながら、コロナ患者の受け入れに消極的な医療機関がないか、東京都などと連携して調査する」

 との考えを表明した。東京都が新型コロナ用に確保した約6000床の使用率が6割に達した段階で、入院できずに自宅待機を余儀なくされる人が相次いでいるからだ。現在の医療体制の中での病床の拡充は、もはや限界であることの証左であり、発想の転換が必要であると痛感せざるを得ない。

 足元で注目すべきなのは、「野戦病院」の動きである。福井県が体育館に100の臨時病床を設置し、日本医師会も「日本各地に野戦病院を設置すべき」との要望書を提出している。

 この構想を早期に実現するために参考になるのは英国の取り組みだ。

 英国のナショナルヘルスサービス(NHS、無料の国営医療サービスシステム)は、昨年4月から5月にかけてコロナ患者用の臨時の野戦病院(ナイチンゲール病院)をロンドンなど6都市で開設した。利用したのは国際会議場などの大規模施設。英国政府は民間病院から病床や医療スタッフの提供を受けられる契約を結び、陸軍の協力も得て約3000床の運営を短期間に開始したのである。

 政府はこのノウハウを効率よく習得するため、NHSのOBなどを「お雇い外国人」として早急に確保すべきだろう。ワクチンの早期接種に尽力した自衛隊の大規模センターの運営が早晩終了することから、今後は野戦病院の設置・運営に活用すべきだ。

 コロナ対策が新たな段階に入った現在、新たな専門家が求められているが、何より大事なのは、「医療体制を是が非でも強化する」という政府の本気度である。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月26日掲載

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