【徴用工訴訟】三菱重工の債権差し押さえを認めるも、「取引相手は三菱重工ではない」と驚きの展開に

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徴用工問題は解決済み

 繰り返しになるが、LSエムトロンが三菱重工業もしくは三菱重工業エンジンシステムに支払う代金はトラクターのエンジン関連代である。三菱重工業が農業機械のエンジンを取り扱っていないことが裁判所に証明されれば、水原地裁の決定は恐らく無効になるだろう。

 仮に、LSエムトロンが裁判所の決定に従って三菱側に代金を支払わなければ、当然三菱側はこれ以上同社に商品を販売するはずもなく、LSエムトロンの事業が先行き不透明となる。これを回避するため、同社は何としても取引相手が“三菱重工業エンジンシステム”だと証明しなければならない。そのための第一歩が地裁に向けた反論だったのは間違いない。12日の決定で三菱側が製品輸出を制限するのであれば既に手遅れだが……。

 加藤勝信官房長官は19日の定例会見で「日本企業資産の現金化に至れば、日韓関係にとって大変深刻な状況になる。これは避けなければならないということを韓国側に繰り返し伝えている」と述べた。徴用工問題は1965年に締結された「日韓基本条約」で既に解決されているという立場を堅持したわけだ。

 韓国のある日本ウォッチャーは、この発言を受け、「日本がこのように反応することは単にこの状況を楽しんでいるだけだ」などと述べていた。楽しんでいるという言葉は独特の比喩でいささか語弊があるかもしれない。要するに、このウォッチャーは、日本政府側は、日韓関係をこれ以上こじらせるようなことを韓国側はしてこないし、できないだろうと楽観視しているようだ、と言いたいのだろう。もっとも、そんな甘い考えは常に裏切られてきたのだが……。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月24日掲載

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