「TOKYO MER」も絶好調 ドラマの老舗・TBS「日曜劇場」でヒット作が続く理由

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TOKYO MERの見せ場

 放送中の「TOKYO MER~走る緊急救命室」はどうかというと、やはりストーリーとキャストが出色。また1話完結ではない。

 主人公は鈴木亮平(38)が演じる救命救急医チームのリーダー・喜多見幸太。救命医のドラマはもはや古典とも言え、やり尽くされたと思っていたら、最新鋭機材とオペ室を備えたERカーを登場させた。この大型車にチームが乗り、事件や事故の現場に急行する形にしたことで、斬新な作風になった。

 また、医療ドラマは病院内のシーンばかりだから、どうしても映像が単調になるが、ERカーの導入で医師たちの活躍の場が無限に広がった。ERカーは画期的なアイディアだった。

 もちろんERカーは現実の医療界には存在しない。ドラマを監修する本物の救命救急医たちの意見に基づき、8トン車を6ヶ月かけて改造し、製造された。これも予算のある「日曜劇場」だから実現できたのだろう。

 喜多見たちは毎週、事故や事件の現場に行き、患者の命を救う。通常の救命救急ドラマなら、これ止まり。だが、それでは1話完結だ。そうしないための仕掛けが施された。

 MERを発案した東京都知事・赤塚梓(石田ゆり子、51)と厚生労働相の白金眞理子(渡辺真起子、52)の対立構図をつくった。2人とも将来の首相候補。ライバルだ。

 白金はMERを潰し、発案者の赤塚を失脚させたい。患者なんかどうでもいいと考えている。ERカーの存在と同じく、現実ではありそうにない話なのだが、ドラマのストーリーとしては面白い。

 この先にも仕掛けがあるようだ。8月8日放送の第6話で赤塚は胸を押さえていた。心臓に疾病があるらしい。それを治すのは誰なのか。

 喜多見に関する仕掛けも残されている。経歴に1年間の空白があり、そこにヒミツがある。あざといほどに見せ場が多い。

 ほかに研修医・弦巻比奈(中条あやみ、24)の成長物語も入っている。厚労省からチームに派遣された医系技官・音羽尚(賀来賢人、32)が、同省とチームの間で揺れ動く姿も。どちらもドラマをヒットに導くセオリーである。スタッフたちの「外せない」という思いが伝わってくる。

 脚本は黒岩勉氏(48)。「日曜劇場」の2019年10月期の「グランメゾン★東京」(主演・木村拓哉)を書いた人だ。「危険なビーナス」も執筆し、どちらも当てた。「日曜劇場」の視聴者層を把握し、勝利の方程式を知っているのだろう。

 10月期に放送されるのは小栗旬(38)主演の「日本沈没-希望のひと-」。異常気象や自然災害が深刻化する中、こちらも話題作になりそう。

「日曜劇場」の横綱相撲はまだ続くだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

2021年8月15日掲載

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