事件現場清掃人は見た 心が折れそうになった私を救ってくれた神主の言葉

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母親からの手紙

「遺族は『やっと死んでくれた』と言いながら、安堵の表情を見せていました。家庭内暴力がひどく、大人になってからは、覚醒剤にも手を出すようになり、逮捕されたこともあったといいます。男性には妹がいましたが、兄を怖がって行方をくらまし、連絡が取れなくなったそうです」

 男性の部屋はゴミが散乱し、荒んだ状態だったという。机の上には、母親からの手紙が置いてあった。

「手紙には、二度とうちに来ないでくれと書かれていました。男性は母親に対して、お金の無心をしていたそうです。男性は、家族へ恨みや怒りがあったようです」

 高江洲氏は、そんな家族の事情を考えながら清掃したという。

「さすがに、心がくじけそうになりました。私は死んで当然と思われている人の部屋の清掃をしているのかと。ふとあの神主さんのことを思い出し、神社を訪ねました。神主さんは私を快く社殿に迎えてくれ、さっそくお祓いをしてくれました」

 神主は、神様に向かって頭を下げ、柏手を打つと、こう言った。

「高江洲さんのことを待っていらっしゃる方が、たくさんいます。本当に大変なお仕事だと思いますが、神様がついて、いつも高江洲さんのことを守り、浄化してくださると思います。ですから、体に気をつけて、また明日から仕事に励んでください」

 高江洲氏は、

「この言葉を聞いたとき、私の辛い思いがさっと晴れ、気持ちが軽くなるのを感じました」

 高江洲氏は神主に、1時間ほど話を聞いてもらい、神社を後にした。

「以来、この神社には2カ月に1度くらいの割合で足を運び、お祓いを受けては神主さんと語らうようになりました。神主さんと気持ちの上でつながっていられると思えることが私の心の支えとなり、この仕事を続けられています」

デイリー新潮取材班

2021年8月12日掲載

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