夏の甲子園で大論争…変則投法&打法で「フェアではない」と非難された球児

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“魔球”を「高校生らしくない」

 2014年、今度は計測不能の“超スローボール”が賛否両論を呼んだ。東海大四(現東海大札幌)の右腕・西嶋亮太は、緩急をつけた投球の幅を広げるためにスローボールを習得。1回戦の九州国際大付戦の4回、「ストライクを取ることを意識し過ぎていたので、リセットする意味で自分からサインを出した」と、古沢勝吾(元ソフトバンク)、清水優心(日本ハム)の3、4番に対し、球速表示の出ない山なりの超スローボールを1球ずつ投じた。

 テレビでは、ボールが画面の上にいったん消えたあと、再び現れて捕手のミットに収まったように見えた。スタンドからもどよめきが起き、続いて大拍手が贈られた。

 タイミングを狂わされた古沢は中飛、清水は3球三振に打ち取られ、6回にも2球スローボールを投じた西嶋は、強打の九州国際大付を5安打1失点に抑え、6対1で快勝した。

 だが、この“魔球”に対し、「ふざけている」「高校生らしくない」などの声が上がり、高校野球に詳しい元アナウンサーの岩佐徹氏も「こういうことをやっていると、世の中を舐めた少年になっていきそうな気がする」などとツイッター上で指摘した(その後、発言は削除)。一方、当時レンジャースに所属していたダルビッシュ有は「ボールを切って投げてるわけじゃあるまいし。どんなボールを投げたっていいでしょう」と擁護した。

 そんな騒ぎのなか、西嶋は「自分の投球スタイルなので、何を言われても気にならない」と受け流すと、2回戦の山形中央戦でも7回にスローボールを披露し、スタンドを沸かせた。

 西嶋は高校卒業後、社会人のJR北海道でプレーしていたが、18年シーズンを限りで現役引退。別の会社に転職し、営業マンに転身している。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年8月10日掲載

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