U-24 メキシコ戦は体力の限界に達していた…勝負師になれない森保監督への不安
疑問のスタメン
メキシコにとっては想定内の交代だろうし、旗手が攻撃を活性化できるとも思えない。「相馬と旗手はセットで使う」と決めているかのような、理解に苦しむ交代だった(旗手の唯一の見せ場は、後半44分の右CKからのトリックプレーだった。メキシコには想定外のプレーだっただけに、シュートはゴール枠に飛ばして欲しかった)。
さらに森保監督は後半18分に林大地(24)に代えて上田綺世(22)、中山に代えて三笘薫(24)の2枚同時代えを行う。ここで旗手は左SBにスライドしたので、三笘起用の布石だったのかと理解したが、それなら最初から三笘(体力的に可能なら)を出した方がメキシコも情報が少ないだけに混乱したはずだ。
実際、三笘は今大会で初めて川崎Fでの輝きを取り戻し、31分にドリブルで抜け出しトゥーキックで決定機を作ると、33分には鋭い切り返しからGKギジェルモ・オチョア(36)のニア上を抜く鋭いシュートで1点を返した。
上田にしても三笘とのコンビから2本のシュートを放っている。いずれもGKオチョアにセーブされたが、林と違いシュートをきっちりとゴール枠に飛ばしているのは生粋のストライカーである証拠だろう。
この2人が登場してからは、明らかに日本がペースをつかんで試合を進めていただけに、なぜスタメンで起用しなかったのか残念でならなかった。「たら、れば」ではあるが、この2人ならフレッシュだったし、メキシコにしても情報は少なかったはずだ。
森保監督の問題発言
「一か八か」のギャンブルで2人をスタメン起用し、精彩を欠く堂安は後半で前田大然(23)と交代でもよかったのではないか。しかし森保監督は冒険をせず、固定したスタメンでほぼ6試合を戦いきった。
これは個人的な、ひねくれ者の印象である。試合前日の公式会見で森保監督は8月6日が広島に原爆が落とされたことに触れ、「明日は世界で初めて広島に原爆が、原子爆弾が投下され、多くの尊い命が失われ、大切な人々の街や生活が失われた」と涙ながらに語ったと新聞が報じていた。
そして「平和をかみしめて明日の試合に臨みたいと思う。人々が安全で安心に生活できるよう、心穏やかに生活できるよう、そうなるように祈っています」とメッセージを発信した。
長崎で生まれ、現役時代のほとんどを広島で過ごした森保監督の心情は理解できる。五輪が1年延期され、日程も変更されたことで巡ってきた8月6日の3位決定戦に、感慨深いものを感じたことだろう。
しかしである。メダルを賭けた試合前日に言う必要があるのか疑問に思った。メディアに向けて発信された言葉は、ネットなどを通じて即座に選手にも伝わる。それならば、選手を鼓舞し、叱咤するコメントを発するべきではなかったか。
森保監督の“優しさ”
平和への祈りは試合後の記者会見の最後に、私見として述べればいい。その資格を森保監督は持っている。
こうしたところにも、森保監督は勝負師になれない、優しい人だと思ってしまう。
U-24日本は大事なところで勝ちきれなかった。相手の実力が上だったこともある。
そして9月からは22年カタールW杯アジア最終予選が始まる。相手は同レベルか格下だが、それでも勝負師になれない森保監督には一抹の不安を覚えずにはいられない。
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