U-24 メキシコ戦は体力の限界に達していた…勝負師になれない森保監督への不安

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疑問の“原爆発言”

 嫌な予感がした。前半11分のことだ。

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 右サイドで久保建英(20)と堂安律(23)がワンツーでパスをつなごうとしたところ、セバスティアン・コルドバ(24)にカットされた。コルドバはすぐ前にいたヘンリー・マルティン(28)につなぐと、マルティンは左サイドに開いていたアレクシス・ベガ(23)に展開した。

 ボールを失った久保は懸命にプレスバックするが、素早い展開に追いつけない。

 そしてベガのドリブル突破に遠藤航(28)が体を入れて阻止しようとしたが、ベガのスピードに体を入れきることができず突破を許してしまった。

 昨シーズンのブンデスリーガではデュエル勝利数ナンバー1を記録した遠藤が、いとも簡単に突破を許し、後追いからのアタックでPKを与えてしまった。ベガの突破には酒井宏樹(31)が備えていたし、カットインに対しては田中碧(22)も控えていた。

 そうした周囲の状況判断を正確に下せないほど遠藤は、肉体的な疲労はもちろんのこと、脳内の情報処理能力も、本人が気付かないうちにダメージを受けていた可能性が高い。

 メキシコも日本と同様にブラジルとの準決勝は延長戦からPK戦にもつれ込んだ。しかし準々決勝の韓国戦は90分間で試合を終えている。

深刻な疲労度

 ところが日本は、決勝トーナメントに入ってからの2試合はいずれも延長戦に突入している。しかも中2日での3連戦である。

 とりわけここまでの6試合すべてにスタメン出場しているダブルボランチの遠藤と田中、トップ下の久保と堂安の疲労度はかなり深刻なのではないかと思ったら、その不安が的中した。

 そして前半22分、メキシコのFKからヨハン・バスケス(22)にフリーでヘディングシュートを許した。マーカーは遠藤だったが、完全に振り切られ、自身の前に走り込まれてしまった。

 セットプレーでのマンマークはスピード勝負のため、一瞬のスキが命取りになる。そのリスクを避けるため、日本はゾーンをベースにマンマークを併用した。それは正解だった。しかし、それでも失点を防ぐことはできなかった。

 0-2となってから、久保が得意のドリブル突破を両サイドから仕掛けて、なんとかメキシコDF陣を揺さぶろうとする。しかし堂安はほとんど攻撃に絡んでこられない。後半は森保一監督(52)のゲームプランにも注目した。

森保監督の判断

 0-2のビハインドのため、普通ならまずはイーブンに戻そうと、攻撃的な選手を投入して攻撃のギアを上げる。それがオーソドックスな戦い方だろう。しかし、これまでほぼ固定したメンバーで戦ってきているため、選手は疲労困憊だ。果たしてこれ以上のギアアップが45分間も可能かどうか判断に悩むところである。

 それならば、まずは致命的な3点目を奪われないよう守備を立て直し、選手の疲労具合を見ながら交代カードを計算する。もうメキシコは無理をしないだろうから、うかつに攻めてカウンターからの3点目だけは防ぎたい。

 その上で、メキシコの弱点を探りつつ、どこかで交代枠を大胆に使って短時間決戦の勝負を仕掛ける。ギャンブルではあるが、メキシコ相手に2点のビハインドをひっくり返すには、これくらい思い切った策が必要だと思った。

 森保監督は後半を迎えるに当たり、相馬勇紀(24)に代えて旗手怜央(23)を左MFに起用した。相馬はもうハードワークできなかったのかもしれないが、スペイン戦とニュージーランド戦に続いて3試合連続した交代パターンだ(ニュージーランド戦は相馬に代えて中山雄太[24]を左SBに起用し、旗手をMFに上げた)。

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